甲子園を沸かせた“逸材19歳”は「救援も面白い」 漂う風格…コーチも絶賛「体が強い」
フェニックス・リーグの四国アイランドリーグplus選抜戦で7回82球無失点の快投
西武のドラフト5位・山田陽翔投手が、故障に悩まされたルーキーイヤーを乗り越え、輝かしい未来へ向けて歩み始めた。滋賀・近江高時代に3度甲子園出場を果たした右腕は10日、「みやざき・フェニックスリーグ」の四国アイランドリーグplus選抜戦に先発すると、7回82球の“省エネ投球”で3安打無失点に封じてみせた。
高卒新人とは思えない風格が漂っていた。「7イニング投げたのは久しぶりでしたが、全然大丈夫でした」。4回までは毎回三振を奪い、相手につけ入るすきを与えない。5回には先頭打者にこの日唯一の四球を与えたものの、次打者にツーシームを打たせて注文通りの二ゴロ併殺に仕留めた。「狙い通りにゲッツーを取れたのは、捕手と(意思疎通の)“キャッチボール”がうまくいったからだと思います」とうなずいた。
イースタン・リーグでは今季3試合(先発2試合)に登板し、勝ち負けはなく、計7回2/3を投げ5失点、防御率5.87の成績だった。大石達也ファーム投手コーチは「夏に内転筋を痛め、ようやくゲーム復帰できるところまできた時に、今度は背中を痛めました。その後3軍戦で段階を踏みながら、少しずつ球数を増やしてきたところで、フェニックス・リーグではほぼ制限なく、80~100球と考えています」と明かす。
怪我からの回復途上とは思えないほど、落ち着いたマウンドさばき。さらに大石コーチに「(8回以降も)まだいけます」と伝えていたという。山田は「課題としているフォークで三振を取れたことがよかった」と振り返るように、落ちる球で何度も相手のバットに空を切らせ、計7三振を奪った。
昨年春の選抜大会では、近江高の主将で4番・エースの大黒柱で初戦から準決勝まで4試合連続完投。大阪桐蔭との決勝では疲労から3回途中でKOされ、チームも大敗して優勝を逃した姿は、涙を誘った。それでもタフネスは人一倍で、大石コーチは「7イニングを投げた翌日(11日)にキャッチボールをしていても、疲労は感じさせなかった。体が強いです」と舌を巻いた。
「春先の球威があれば短いイニングも面白い」
大石コーチは「まだ若いですし、フォーク、ツーシーム、カットボールの扱いも上手なので、当面は先発でいくと思います。まずはファームで(先発)ローテーションで回ってほしい。今年の羽田(慎之助投手=2年目)や菅井(信也投手=2年目)がそうだったように、最初は中8~10日でしっかり1年間を投げ切ることを目指し、翌年に中6日にできたらいいですね」と着実にステップを踏ませたい考えだ。
一方で、大石コーチは「あくまで個人的な考え」とした上で、「今は故障明けでストレートはMAX145~146キロ、平均143~144キロといったところですが、春先には150キロを連発していて、あの球威があれば、短いイニングのリリーフも面白いと思いました。ゆくゆくは球団との話し合いになっていくと思います」と語る。
山田自身は「自分は球速が出るタイプではないですが、ボールにしっかり力を込めて球威で押していけるようにしたい」と自己分析。すでに1軍を何年も経験しているかのような落ち着きが宿っている。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)