2か月運動禁止→最多勝の大飛躍 “ネクストブレイク”期す22歳…同期ドラ1には「教わります」
マイナス思考も大怪我が転機に…2軍最多勝に輝いたオリックス・佐藤一磨
虎視眈々と“ネクストブレイク”を狙う。オリックスの育成左腕・佐藤一磨投手は今季、2軍で8勝をマークし、ウエスタン・リーグ最多勝のタイトルを獲得した。飛躍の理由として「真っ直ぐをゾーンに投げ込んで勝負できるようになった」と話し、笑顔を見せた。
2019年育成ドラフト1位で入団した22歳は、高卒4年目のシーズンを終えた。190センチの長身から繰り出す直球に、大きく曲がるカーブなどを織り交ぜるスタイルで躍動。今季はファームで19試合に登板して8勝3敗、防御率3.94の成績を残し、阪神・秋山拓巳投手と並んで最多勝に輝いた。
「1年目に腰の怪我してしまいましたけど、それ以降は離脱せずにやれています。(ドラフト同期の)宮城(大弥)も中田(惟斗)も松山(真之)さんも、その時ファームで主戦で投げていました。あの時は『あ、このまま終わってしまうのかもな……』と思ったこともあります。(怪我する前に)投げているボールも宮城と比べて、全然でしたから」
プロ1年目の2020年、夏場は腰痛に苦しみ「2か月完全固定で、運動禁止でした」と振り返る。「ウォーキング、ジョギングの流れで、結局7月からはほとんど投球ができずに、(投げられたのは翌年の)春キャンプでした」。仲間の活躍を見て「(思考が)マイナスの方向にどんどん転がっていくというのが正直ありましたね。どうしようもなかったです、あの時は」。それでもリハビリを続ける中、考え方に変化が生まれてきた。
「(山本)由伸さんとか、宮城もですけど、元々ポテンシャルが高くて(プロに)入ってきている。2軍の打者はもちろん抑えられますし、1軍でも大丈夫です、という選手。僕とは違う世界にいる。プロに入って2軍でも通用するかしないか、という選手はしっかり練習していかないといけない。僕は『宮城はすごいから……』と心のどこかで思っている。だから、宮城と比べてしまうとダメになっちゃうんです」
同じ育成出身の東が示す希望「すごいなぁという感じです」
同期入団のドラフト1位左腕に羨望の眼差しを送っていた頃、2軍で着実に力をつけていたのが東晃平投手だった。東は2017年育成ドラフト2位で入団してからの5シーズン、ファームで奮闘していた。
「諦めない大切さ、希望を教えてもらいました。僕はそのタイプの選手を指標にして頑張っていきたい。東さんは、新星のイメージが強いんですけど、ファームでずっと投げて頑張っておられたので、いきなり出てきたという感じは(自分たちには)ないんです。ずっとファームで安定して投げておられて、1軍でも同じような投球をしている。すごいなぁという感じです」
佐藤一も“シンデレラボーイ”の背中を追う。だからこそ、同じ左腕の宮城から話が聞きたい。「宮城には、本当にもう、教えてください! という感覚ですね(笑)。同級生ですけど、先輩に話を聞くような感じです」。同じ舞台に立つ日に向けて、懸命に腕を振り、貪欲に突き進む。
(真柴健 / Ken Mashiba)