ライバルは続々歓喜で「悔しさも」 ハム1位の栄誉も…もどかしかった“1時間10分”
日本ハム1位指名の東洋大・細野晴希「諦めずにやれば、結果はついてくる」
東洋大の最速158キロ左腕・細野晴希投手は、26日に行われた「プロ野球ドラフト会議 supported by リポビタンD」で日本ハムから1位指名を受けた。1度目も2度目も入札がなく、“3度目の正直”での指名。都内の東洋大キャンパスで会見に臨んだ細野は、「細野の“ほ”の音が早く流れてくれないかなと思った」と、悔しさともどかしさの中で待ち続けた胸中を語った。
会議が始まる30分前から井上大監督と共に会見場に待機した細野は、目の前に設置されたモニターの中継を、表情を崩すことなく見つめ続けた。しかし、東都リーグで切磋琢磨してきた投手たちが次々と指名される中、自身の名はなかなか呼ばれず、視線を上げてジッと宙を見つめる場面も。3度目の入札で日本ハムが交渉権を獲得した時には、会見の席に座ってから1時間10分が経っていた。
夢に見たプロへの扉を開いた喜びと安堵感はありながらも、ライバルたちに“遅れ”を取ったことを「悔しい思いもある」と表現した左腕。しかし、その分「プロに入ってから、同級生たちに負けないように、という気持ちが強く出てきた」と言う。DeNA4位指名のチームメート、石上泰輝内野手が「性格的にはおとなしい」と評するように、口数は決して多くはないが、それでも内に闘志を秘めたタイプ。宙を見つめた時の力強い眼差しは、「これからが勝負」と言う決意表明でもあっただろう。
今では180センチ、86キロの体から剛速球を投げ込むが、初めから体格的に恵まれていたわけではない。東海大菅生・中等部に入学時は146センチ、42キロ。同中等部の村上晋監督は「体が小さかったので、まずは体づくり優先。高校から先を見据えて、試合でもあまり投げさせなかった」と言う。それでも「入学時から光るものがあったし、何より向上心も強かった」。東亜学園高でも最後の夏に都大会初戦敗退を喫するなど悔しさを味わったが、それもバネにして地道なトレーニングに励んできた。
中学時代は120キロも出なかった球速も、体が出来上がるにつれて140キロ台、150キロ台へと伸び、今夏、8月28日に東京ドームで行われた「侍ジャパン」U-18代表との試合で、ついに158キロをマーク。「(中学の頃は)結構、小さかったですね。でも体の大きさは正直、(野球では)関係ないと思います。吉田正尚選手(レッドソックス)も決して大きくない。諦めずにやっていけば、結果はついてくると思います」と細野は語る。
球速は160キロの大台間近だが、まだ制球力が課題。「そこも伸び代だと思っています。真っ直ぐの強さとコントロールを磨いていきたい」。“外れ・外れ”での1位という悔しさもまた糧にして、北の大地でさらなる成長を示すつもりだ。
(高橋幸司 / Koji Takahashi)