岡田阪神がわずかに有利? 対照的な「固定vs自在」…専門家が日本Sを展望
チーム防御率は両者今季リーグトップ
阪神とオリックスの“関西ダービー”となった今年の日本シリーズ。現役時代にヤクルトの名外野手として鳴らし、日本シリーズにも4度出場している野球評論家・飯田哲也氏は「史上稀に見る大接戦になるのではないか」と見る。それでも「あえて予想するなら、4勝3敗で阪神」と“猛虎やや有利”とするのはなぜか。
飯田氏は「両チームとも投手陣が先発、リリーフともに充実しています。基本的にロースコアの、しびれる接戦が続くでしょう」と展開を読む。「阪神はクライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージで広島をスイープしましたが、3試合とも相手に先制されながら、投手陣が粘って最小限の失点でしのぎ、逆転勝ちするパターンでした。日本シリーズもあれに似た展開になるのではないでしょうか」と比較的地味な攻防を予想する。
阪神とオリックスの共通点は、今季それぞれのリーグでトップの防御率(阪神は2.66、オリックスは2.73)を誇った投手力の充実ぶりにある。阪神のチーム打率はリーグ3位の.247だったが、得点はトップの555。逆にオリックスはリーグトップの.250をマークするも、3位の508得点にとどまった。阪神はチーム本塁打がリーグ5位の84本と少なく、リーグトップの79盗塁の機動力でカバー。逆にオリックスは本塁打がリーグトップの109本、盗塁はワーストの52だった。
両チームのスタメンの動向を比較すると、阪神の岡田監督は不動のオーダーを好み、CSファイナルステージ3試合も「9番・投手」以外、打順も守備位置も同じだった。対照的にオリックスの中嶋聡監督は、シーズン中から選手の調子や相性によって自在に入れ替えてきた。CSファイナルステージ4試合で、打順も守備位置も全て同じだったのは「4番・DH」のレアンドロ・セデーニョ内野手と、「5番・左翼」の杉本裕太郎外野手だけ。しかも、CSのMVPを受賞した杉本は最終第4戦の8回、遊ゴロで一塁へ走り出した際、左足首を痛めて交代。なおさら流動的になってきた。
全143試合で4番は大山の阪神、7人が務めたオリックス
岡田監督がレギュラーシーズン全143試合で4番を大山悠輔内野手に任せたのに対し、オリックスの4番は71試合の森友哉捕手を筆頭に、計7人が務めた。“固定の岡田”と“変幻自在の中嶋”といった様相だ。
飯田氏は「中嶋監督が選手や打順を入れ替えて戦ってきた背景には、蓄積されたデータという根拠があったと思います。その点、データの少ない別リーグの阪神が相手となると、やや不利。数字上のデータはあったとしても、実際に戦ってみないとわからないことも多いですから。固定されたメンバーで普段通り戦える阪神の方が、少し有利かなと思います」と見解を述べた。
両チームのキーマンは誰か。「打てばチーム全体の雰囲気が盛り上がる選手。阪神では佐藤(輝明内野手)。オリックスは杉本が怪我を抱えたとなると、森への期待が増すと思います。逆に言えば、相手のキーマンを抑えることが日本シリーズを制する鉄則です」と飯田氏は指摘した。
共通点と対照的な面が交錯する両チーム。オリックスの2年連続シリーズ制覇か、それとも1985年以来実に38年ぶり2度目となる阪神の日本一か──。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)