球速全盛時代に際立つ技巧派左腕の「14.9」 打者を支配する異質な“遅い直球”

広島・床田寛樹【写真:小林靖】
広島・床田寛樹【写真:小林靖】

広島の床田は平均球速142.5キロながら、直球の“信頼度”はリーグトップ

 広島・床田寛樹投手は今季、11勝7敗、防御率2.19の好成績で、7年目にしてキャリアハイの数字を残した。150キロ台を記録する投手が珍しくない現代の野球界では、緩急を駆使して打者を打ち取る技巧派左腕は稀有な存在と言える。床田の投球の“凄み”を数値で見ると、球速&パワーがトレンドの中で、特筆すべき事実が浮かび上がってくる。

 セイバーメトリクスの指標を駆使して分析などを行う株式会社DELTA(https://1point02.jp/)のデータによると、床田のストレートの平均球速は142.5キロとなっている。これはセ・リーグで規定投球回に到達した投手の中で、下から3番目の数値。1位の高橋宏斗投手(中日)は152.3キロのため、約10キロも遅いことになる。

 ただ、この一見劣っているかに見えるストレートこそ、床田の武器である。平均的な投手を基準に、ストレートがどれだけ失点を増減させたかを示す「wFA(Fastball runs above average)」は「14.9」を記録し、規定投球回到達の中で1位となっている。この数値は、プラスが大きければ好結果を表し、直球が信頼できる球種だったことを示している。

 投球間隔も短く、1球ごとのテンポは「11秒5」となっており、こちらもリーグ1位。今季のリーグ全投手の平均値は「16秒0」だったことから、床田のマウンドさばきが際立つ。

 最速165キロを誇るロッテ・佐々木朗希投手や、オリックス・山本由伸投手のような剛速球は持ち合わせていない。それでも唯一無二の技術で打者を牛耳る“玄人好み”の投球も、見るものを魅了している。今季の手ごたえを胸に、ますます円熟味を帯びる来季の床田の投球に期待したい。

(Full-Count編集部 データ提供:DELTA)

データ提供:DELTA http://deltagraphs.co.jp/
 2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える デルタ・ベースボール・リポート1~3』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『1.02 Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。集計・算出した守備指標UZRや総合評価指標WARなどのスタッツ、アナリストによる分析記事を公開する『1.02 Essence of Baseball』(https://1point02.jp/)も運営する。

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