中国大会準Vの創志学園に感じた伸びしろ 名将が示した成長を促すための“引き出し”

創志学園・門馬敬治監督【写真:喜岡桜】
創志学園・門馬敬治監督【写真:喜岡桜】

創志学園は秋季中国大会準V、伸びしろは「ここ一番」の勝負強さ

 高校野球の秋季中国大会は5日、岡山のマスカットスタジアムで決勝戦が行われ、広陵(広島)が創志学園(岡山)を2-1で下し、3年連続14回目の優勝を果たした。惜しくも敗れた創志学園の門馬敬治監督は、「点差以上にね、大きな差を感じた一戦でした」と振り返った。

 門馬監督は、神奈川の名門・東海大相模を春夏通算4度の甲子園優勝に導いた名将として知られる。春夏合わせ6回の甲子園出場を誇る県下の実力校でも、今夏は初戦敗退の屈辱。昨年8月に就任した指揮官自身も、監督人生初の県大会初戦敗退を喫し、順風満帆の船出とはいかなかった。それでも、就任からわずか1年3か月で中国大会準優勝と結果を残したが、指揮官の目にははっきりとした課題も見えていた。

 悔やまれるのは、1点リードで迎えた5回裏、2死二塁で最速138キロのエース・山口瑛太投手(2年)の甘く入ったストレートを、広陵の1番・濱本遥大外野手(2年)に痛打され、同点を許した場面だった。

「(直前に送った伝令で)インコースを思い切って突こうと伝えましたが、その1球が甘く入ってしまった。(走者が)二塁だったのでフォアボールでも一、二塁でしょう。(今のチームに足りないのは)“ここ一番”のところ。広陵は最後(の勝ち越し打が)2ストライクからじゃないですか。その差が勝ち負けに大きく影響したと思いますね」

 山口も「打たれた瞬間にセンターに『取ってくれ!』って思ったんですけど、そこは自分のミスなので、自分が投げ切らないといけないなと思いました」と肩を落とした。8回2死二塁からリリーフした中野光琉投手(2年)も先頭を四球で歩かせた。2人はエースナンバーを競い合うライバル。山口は両者の成長が「チームの勝利に繋がる」と言葉に力を込め、冬のあいだに切磋琢磨することを誓った。

東海大相模での成功事例…好投手との対戦経験豊富さは攻撃力向上のカギ

 打線は広陵の背番号11・堀田昂佑投手(1年)の変化球に苦戦し、被安打4、8三振でわずか1点に抑えられた。ただ、好投手と対戦できたことは財産になると指揮官は語る。対応できなかった球に対し、「こういうボールがあるんだね」と感じる積み重ねが大切と説く。

 東海大相模を指揮した時には、桐光学園の松井裕樹投手(現楽天)、大阪桐蔭の藤浪晋太郎投手(現オリオールズ)、根尾昴投手(現中日)らとも対戦した。“超高校級”の投手の独特な軌道を目の当たりにさせることで、引き出しが増え、成長した選手の姿を見てきた。創志学園でも「選手にもっといろんなことを経験させてあげたい」と語り、課題解決の方法のひとつとして好投手との実戦を設けるつもりだ。

 もちろん普段の練習から、投手力、攻撃力ともに磨いていく。「今日は練習しますよ。悔しいうちに練習します。それしかないでしょう。人間忘れるから、忘れる前にね。あと1球が、あと1点が、あのプレーがって思いながら練習していかないと。(悔しさを)途切れさせちゃだめだと思うんでね。次の目標を設定するよりも、(まずは試合に負けたばかりの)今日をどう過ごすか。それで明日以降が変わってくると思います」。

 1つでも課題をクリアにして春を迎えるために、休んでいる暇はない。名将とともに歩む球児たちは悔しさをバネにして強くなる。

(喜岡桜 / Sakura Kioka)

RECOMMEND

KEYWORD

CATEGORY