残留意思も「ちょっとモヤモヤ」 31歳でFA宣言…決断の中に見えた“家庭の顔”

取材に応じた西武・平井克典【写真:宮脇広久】
取材に応じた西武・平井克典【写真:宮脇広久】

16日に全球団との交渉解禁も「残りたい気持ちの方が強い」

 西武・平井克典投手が9日、今季中に取得した国内フリーエージェント(FA)権の行使を表明。所沢市の球団事務所に申請書類を提出した。16日から全12球団との入団交渉が解禁されるが、平井は報道陣の取材に「そこ(他球団への移籍)はあまり考えていない」「(西武に)残りたい気持ちの方が強い」と語った。チームへの愛着を強調しつつ、権利行使に踏み切った理由とは──。

 2019年にパ・リーグ記録の81試合に登板した“鉄腕”。今季も貴重な中継ぎとしてチーム最多の54試合に登板。4勝3敗28ホールド、防御率2.55の好成績を残し、通算100ホールドも達成した。経験豊富なリリーフ右腕に他球団も興味を示しそうだが、平井は仮に他球団からオファーがあった場合に応じるかどうかについても、「今のところ何も考えていません。そこは本当に何も考えていないとしか言えません」と首を横に振るばかりだった。

「(西武を)出る、出ないではなく、もう少し時間をかけてライオンズさんとお話したい。こういう権利を持っている時の方が、お互い腹を割って話ができると思います。僕自身、来季へ向けてちょっとモヤモヤした気持ちがあったので、そこをしっかり整理して向かうためにも、『もう少し時間をください』という感じの宣言だと思っていただければ」と説明した。

 チーム事情に応じ先発・リリーフ両刀で重宝されてきたが、「来季も松井(稼頭央)監督の下でやることになれば、その指示に従うだけです、必要としてくれる所でやりたい」と起用法にこだわりはない。だとすれば、平井が言う「ちょっとモヤモヤした気持ち」とは何を指しているのだろうか。

 おそらく年俸や契約年数、環境などの条件面は多少なりとも含まれているだろう。「そこは個人と球団との話し合いなので、あまり言えない。僕が思っていることをしっかり伝えさせていただき、球団からの要望もしっかり聞いて、双方納得した上で返事をしたい」と多くを明かさない。

自身の選択は家族優先「妻に迷惑をかけながら好きな野球をやらせてもらっている」

 また、来月に32歳となる平井は、家族を含めた人生設計にも、あれこれ思いを巡らせている。就学前の息子について「小学校に上がる前に永住先を決めてあげたい。そういうことも考えて、正直言って悩んでいます。息子は友だちができて楽しそうにしているので、できれば転校は避けてあげたいというのが、親としての正直な気持ちです」と吐露する。

 一方で「妻には関東以外から来てもらっているので、そっち(妻の実家方面)に家を建てて、(平井自身が)当面は単身赴任するのがいいのかなとか……そういうことを視野に入れなければいけない歳になってきています」とも。平井自身は愛知県出身。このあたりは、転勤のある企業のサラリーマンなどにとっても身につまされる話だ。

「野球選手は定年までできる仕事ではないですし、僕も先はそれほど長くはないと思う。人生は引退してからの方が長いですし、一緒にいる時間が長いのは家族です」

 西武に欠かすことのできないタフネス右腕も、1人の夫であり父である。「妻に迷惑をかけながら好きな野球をやらせてもらっているので、家族のことを最優先に考えたいですし、家族の意見を聞きながらやっていきたいと思います」と続けた。FA宣言を機に堅実な“家庭での顔”が浮き彫りになった。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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