一致せぬ成績と結果…トライアウトにあった疑問 受けずに掴んだ“巨人への道”
元オリ鈴木優氏は2021年オフに戦力外…トライアウトを受けずに巨人と育成契約
プロ野球の「12球団合同トライアウト」が15日に鎌ヶ谷スタジアムで行われる。戦力外通告を受けた元NPB戦士にとっては、再起をかけアピールする場。一方、元オリックス、巨人の鈴木優氏は1度目の戦力外通告を受けた時、トライアウトを受けずに吉報を待った。「新たな球団を見つけたからって、(トライアウトで)いい結果を残しているわけではない」と制度自体に疑問を呈した。
鈴木氏は2014年に都立雪谷高からドラフト9位でオリックスに入団。2020年7月1日の敵地・西武戦で5回無安打無失点7奪三振と好投し、都立高から直接プロ入りした選手としては史上初となる白星を飾った。しかし、2021年は1軍で11試合、防御率9.00と苦しみ、翌年の契約を提示されなかった。
現役を続ける意思はあったが、トライアウトには参加せず。自らが目指した選択肢は米進出かNPBだった。「元々アメリカの野球に興味があって。マイナー契約でもいいから目指してみようと」。米移籍も模索しながら新天地を探していると、巨人から育成契約の打診があった。「自分も東京出身ですし、プロ野球と言ったら巨人というイメージだったので。もう一度ここでチャンスをもらえればと思いました」。救いの手に感謝し、再出発を決めた。
「現状として、トライアウトだけでNPBの編成が動くかっていったらそうじゃない」。各球団の編成担当は他球団のNPB選手は常に目を光らせているという。実際に鈴木氏もトライアウトを受けずに巨人から声がかかった。トライアウトはシーズン終了後の11月に行われ、気温もシーズン時期とは異なり、本来の力を出せないことも。自分のベストは常に見せてきた自負があったからこそ、受けない決断ができた。
“絶対に受けるべき選手”の存在も「社会人チームの編成もスタンドから目を光らせる」
今年も第1次、第2次合わせて145人が戦力外通告を受けた。その中には再びNPBの夢舞台を目指す選手も多い。しかし、直近2年間で参加した82選手のうち、合格者はわずかに5人。合格率は僅か6%と狭き門だ。NPBのみを目指すなら「受けない選択肢もあるのかな」とやみくもに参加することは推奨しない。
一方、受けるべき人も存在するという。トライアウトでは、独立リーグ、社会人野球の編成担当者らもスタンドから目を光らせる。「他の選択肢も自分の中にある場合は100%受けるべきだと思います。進路は分からないけど、現役を続けたいって人は受けたほうがいいですね」。
昨オフ、巨人から戦力外通告を受け、現役を引退。支配下登録は叶わなかったが、1年間チャンスをくれた巨人に感謝の気持ちは強い。今は留学しながら、野球、語学の勉強にいそしんでいる。形は違えど、かつての“夢”だった米国進出をかなえたのは、自らにぶれない信念があったからだ。
(川村虎大 / Kodai Kawamura)