私立進学なら「翔平は生まれてなかった」 人生の決断へ…“二刀流”父が重視する野球観

金ケ崎リトルシニアの大谷徹監督【写真:小谷真弥】
金ケ崎リトルシニアの大谷徹監督【写真:小谷真弥】

大谷徹監督率いる岩手・金ケ崎リトルシニア…選手の進学先は「自由」

 岩手県の内陸部、金ケ崎町にある「金ケ崎リトルシニア」は、今年度の選手数は55人と、県内の中学硬式野球クラブの中では多くの部員が在籍するチームの1つだ。卒団生の進学先を見れば、県内の県立高校や私立高校が主で、過去には県外の私立高校に進む選手もいた。大谷翔平選手の父であり、チームを率いる大谷徹監督は言う。

「私としては、好きな高校へ行ってください、自分自身がやりたい高校で野球をやってください、という考えです」

 これまでの傾向を見れば、県内の強豪私学である花巻東高校へ進む選手が多いのは事実だ。2022年春の選抜大会出場時に主力として活躍した田代旭と宮澤圭汰(ともに現在は筑波大)、今年で言えば、夏の甲子園8強のメンバーである熊谷陸、そして希代のスラッガーとして注目された佐々木麟太郎、その1つ下の学年でいえば、左腕の葛西陸などが、金ケ崎リトルシニアの出身。それぞれの目標と目的を持って、彼らは花巻東高校へ進学した。

 ただ、あくまでも進学先は、本人の意識次第。それぞれの「決断」を最優先に、選手たちの思いを尊重するのがチーム方針だ。

 進学先は「自由」という考えは、2014年のチーム創設当初から変わらない。たとえば、志を高く持ち、技術的な能力も高い選手が、より高いレベルでの高校野球を求めるのは自然の流れだろう。ただ、中学時代に硬式野球クラブでプレーしたとはいえ、高い身体能力を兼ね備えた選手ばかりというわけではない。

 要するに、それぞれが野球に対する意識は違うだろうし、「こういう環境で野球がやりたい」「地元で好きな野球を続けたい」「仲間と一緒に野球がやりたい」、そんな異なる野球観があって高校を選択する。大谷監督は言うのだ。

「野球を続けるのであれば、やはり好きなところでやってほしい。本人と保護者の方の相談にも乗りながら、進路先は決まっていきます」

もし黒沢尻工に行かなければ…「すべては巡り合わせ」

 大谷監督は、地元・岩手の県立黒沢尻工高校(以下、黒工)を卒業後、社会人野球の三菱重工横浜でプレーした球歴を持つ。高校選びの際、当初は県内の私立高校へ進んで野球を続けるつもりだったというが、結局は黒工へ進んだ。

「もしも黒工に行っていなかったら、三菱重工横浜でプレーすることもなかったと思うし、翔平も生まれていなかった。すべては巡り合わせというか……。結局は『こっちの高校に行ってよかった』というのは後になってわかるもの。その当時は、なかなかわからないものですよね。でも、思うんです。高校選びは人生の岐路だな、と」

 大谷監督は自身の経験も踏まえ、強制ではなく、あくまでも「自身で考えて進学先を選ぶ」ことが大事だと、いつの時代も考えるのだ。

(佐々木亨 / Toru Sasaki)

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