激化する侍Jの「左の先発」争い 完璧投球見せた25歳…専門家が評価する潜在能力

台湾戦で先発した侍ジャパン・早川隆久【写真:中戸川知世】
台湾戦で先発した侍ジャパン・早川隆久【写真:中戸川知世】

野球評論家の野口寿浩氏が分析「シーズン中よりいいものを出せた」

 楽天の早川隆久投手は18日、「カーネクスト アジアプロ野球チャンピオンシップ 2023」(東京ドーム)の豪州戦に先発し、1人の走者も許さず5回をパーフェクトに抑えた。現役時代にヤクルト、日本ハムなど4球団で捕手として活躍した野球評論家・野口寿浩氏は「DeNAの今永(昇太投手)のメジャー移籍が濃厚で、来年のプレミア12ではジャパンの左の先発枠が1つ空く。西武の隅田(知一郎投手)らとレベルの高い争いをしてほしい」と期待を寄せる。

 早川は2020年ドラフト1位で楽天入りした時から、能力を高く評価されていたが、プロでは故障にも見舞われ、今季までの3年間の成績は9勝7敗、5勝9敗、6勝7敗。しかし、この日は「6勝の投手の球ではなかった」と野口氏を感嘆させた。

 ポイントの1つは、初回の先頭打者にあった。リアム・スペンス内野手にカウント3-2から、5球連続ファウルで粘られ、11球を要しながらも左飛に仕留めた。早川自身「これで四球を出したら、まずいなと思っていました」と明かす。野口氏は「シーズン中は、粘られて根負けして四球を出してしまうシーンを結構見ました。それだけに、あそこをアウトにできたのは本当に大きかった」と指摘した。

 2回、先頭の4番アレックス・ホール捕手に、初球から3球連続のチェンジアップで空振り三振に仕留めると、一気に波に乗った。結局5回打者15人から、4者連続を含む7三振を奪った。「特にカットボールとチェンジアップをうまく制球していました」と野口氏。圧巻は右打者の外角低めへのコントロールで、「打者にしてみれば、ボールゾーンからストライクゾーンに入ってくるカットボールと、逆に逃げていくチェンジアップの両方があり、そのコースにドンと真っすぐを投げ込んでくることもある。こうなると打ちにくいです」と説明した。

「普段の早川は、要所で甘いところに投げてガツンとやられたりしていましたが、この日はそういう心配が全くなかった。シーズン中より、いいものを出せたのではないでしょうか」とも。その要因を「ジャパンのユニホームを着ていることもあるでしょうし、他球団の年下の投手がいい投球を続けていたので、自分だけ打たれるわけにいかなかったこともあるでしょう」と分析した。

 今大会では、初戦のチャイニーズ・タイペイ戦に先発した1歳下の巨人・赤星優志投手が5回途中3安打無失点、翌日の韓国戦でも同じく1歳下の先発・隅田が7回3安打無失点に抑え、早川は大いに刺激を受けていたのだ。

来年11月のプレミア12を経て、2026年のWBCへ

 日本球界の左腕では、今年3月のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で決勝の米国戦に先発した今永が、このオフにポスティングシステムでメジャーに挑戦する見込みだ。2026年に開催される予定のWBCはともかく、来年11月のプレミア12は、過去2回にメジャーリーガーが参加していないことから、今永不在の可能性も高い。早川や隅田、そして救援要員として今年のWBCでもメンバー入りしていたオリックス・宮城大弥投手らが、その穴を埋める候補となるだろう。

 野口氏は「プレミア12でいい投球をすれば、次のWBCも、となる」とも指摘。「もともと早川の潜在能力には、リーグを代表する左腕になれるものがありました。これをきっかけに来年飛躍し、いい競争をしてほしい」と目を細める。若手左腕たちの出世争いが楽しみだ。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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