“決勝までゼロ”かけた言葉は「頼む」のみ リラックスは無理…あえて課した重圧
井端監督が明かす代打起用…2点差だったら「森下選手を立たせてた」
野球日本代表「侍ジャパン」は19日、「カーネクスト アジアプロ野球チャンピオンシップ 2023」決勝戦で韓国を下し、2大会連続のアジア王者に輝いた。1点を追う延長10回無死一、二塁。代打で起用された古賀悠斗捕手(西武)の犠打が、その後のサヨナラ勝利を呼び込んだ。
ナイン全員がベンチを飛び出し、大仕事を果たした24歳へ声をかけた。井端弘和監督も「グッとくるものがあった」と感謝する。延長タイブレークで1点を追う10回無死一、二塁。ここまで打率.455と好調だった森下翔太外野手(阪神)を下げて古賀を起用した。
「タイブレークじゃなかったら森下選手を立たせてたかなと思います。大会に入る前から、森下選手ではなくても、2点なら打たせよう、1点ならバントでと決めていました」と井端監督は明かした。大会前から打撃練習の際に何度も「タイブレーク行ったらバントあるぞ」と伝えていた。
打席に入る前、声をかけたのは「頼む」のみ。井端監督自身も国際大会で代打バントの経験があるというが、「『リラックスして』と言っても自分はできないと思いましたし、頼むと言われたほうが、自分だったらまだ楽かなと思ったので。古賀選手には申し訳ないですけど、(あの場面では)何言っても入ってこないので。頼むで済ませました」と考えた末の「頼む」だったことを明かした。
古賀もいざ呼ばれたときは「緊張しました」と言うが準備はできていた。「1球で決めるか、1球ファウルにして、2球で決めるかでは、流れが変わってくると思う。一発で決めようと思って打席に入りました」。初球で決めると、続く牧秀悟内野手(DeNA)が申告敬遠で1死満塁、坂倉将吾捕手(広島)の犠飛で同点に追いついた。再び万波中正外野手(日本ハム)が敬遠され、最後は門脇誠内野手(巨人)がサヨナラ打を決めた。
今大会では決勝まで犠打を一度も記録していなかった。しかし、この日は6回無死二塁での門脇の犠打も、延長タイブレークでの犠打もともに得点に結びついた。接戦を制しアジアチャンピオンに輝いた裏には選手、監督の入念な準備があった。
(川村虎大 / Kodai Kawamura)