戦力外通告に号泣も「待つのが嫌い」 トライアウト見送り…即決だったメキシコ行き

元DeNA・大橋武尊【写真:町田利衣】
元DeNA・大橋武尊【写真:町田利衣】

大橋武尊はDeNAを2年で戦力外となりメキシカンリーグ入りを決めた

 DeNAを今季限りで戦力外となった大橋武尊外野手は、メキシカンリーグのアグアスカリエンテス・レイルロードメンで次なる戦いをスタートさせる。12球団合同トライアウトも受けず、戦力外通告直後に決断。NPBをわずか2年で去った22歳がメキシコを選んだ理由とは――。

 5歳の時、家族旅行で訪れたドジャースタジアム。ようやく手に入れたのは最上段のチケットで、選手は小さくしか見えなかった。でもそこから見たマニー・ラミレスに心を奪われてから、大橋の目標が揺らいだことは一度もない。

「メジャーリーグで活躍すること」

 そのためにやってきたNPBの舞台はわずか2年で戦力外となったが「ルート1が消されたけど、だったら次はルート2を辿ればいい。周りからしたら馬鹿らしいと思うかもしれないですけど、そこ(目標)がブレたら僕が僕じゃなくなるし、そこを変えないといけなくなったときが僕が野球を辞めるときだと思っているので」と目の輝きは失っていない。

 中学では野球部に入らず、個人トレーナーをつけて練習。英語は全く喋れなかったが日本の高校は選ばず、米国の名門「IMGアカデミー」へ入学し、トップチームでプレーするまでになった。帰国してルートインBCリーグの茨城アストロプラネッツに1年間所属し、2021年育成ドラフト3位でDeNA入り。こんな異色の経歴も全て、目標への近道を考えた結果だった。

「わからない土地で知らない文化ですけど、あまり不安とかはなくて」

 10月3日に戦力外通告を受けると号泣するほど落ち込んだが、その日の夜にはエージェントに相談し「視野を広げて考えよう」と気持ちを切り替え動き出した。メキシコからのオファーに「僕、海外に行くとか全く抵抗ないので。その方がMLBのスカウトが多く見てくれるだろうし。楽しく挑戦していくと考えたときにアリだなと、二つ返事でした」と10月初旬にはメキシコ入りを決めていた。

 NPBのトライアウトを受けてから……という選択肢もあったはずだが「待ちながら、というのが嫌いなんです」とキッパリ。「何かを自分でやりたいならアクションを起こしたかったので」というのも、大橋の生き方を表しているようだ。両親にも「来年からメキシコ行こうと思っている」と報告し、「いいんじゃないの」と背中を押してもらった。

 まだメキシコに降り立ったことはないが「わからない土地で知らない文化ですけど、あまり不安とかはなくて。スペイン語は勉強しないとな」と笑う。今後は渡米し、2月中旬に独立リーグの選手らがMLB傘下の球団などと試合を行う「アジアンブリーズ」に参加して実戦感覚を取り戻し、メキシコに入る予定だ。

「ベストはメキシコに行って1年か2年でメジャー球団のマイナー契約をつかみ取って、ピラミッドの中でステップアップしていくことです」と先を見据えた大橋。17年前にドジャースタジアムで見た光景はスマートフォンの待ち受け画面に設定し、いつも目にして初心を忘れないようにしている。「『僕はここで野球をやりたい』と言ったあのときから、何も変わっていないんです」。DeNAでは志半ばに終わったが、夢を追い続ける時間は、まだまだある。

(町田利衣 / Rie Machida)

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