怪我でマネジャー→遊び感覚で150キロ 投手歴1年…異色の右腕が甲子園で与えた衝撃

佐久長聖OBの小林禅【写真:橋本健吾】
佐久長聖OBの小林禅【写真:橋本健吾】

佐久長聖OBで東北福祉大の小林禅投手が152キロをマーク

 2020年に新型コロナウイルスの感染拡大で、選手権大会が中止となり、当時の3年生が中心の大会「あの夏を取り戻せ~全国元高校球児野球大会 2020-2023~(以下「あの夏」)」が29日、甲子園で開催された。第1試合では佐久長聖OB・小林禅投手(東北福祉大)が152キロをマーク。高校時代はマネジャーで“投手歴1年”の右腕は憧れのマウンドを経験し「将来はプロを目指したい」と目を輝かせていた。

 初回から球場はどよめきに包まれた。佐久長聖OB先発・小林は140キロ後半の直球を連発すると、大台超えとなる152キロを計測。限られた時間で選手を使い切るため1イニングで降板となったが「めちゃくちゃ興奮しました。5回ぐらい投げたかったですね」と満面の笑みを見せた。

 名門・東北福祉大に在籍しているが「去年から野球を始めました」と苦笑いを浮かべる。高校時代は2年まで外野手としてプレーするも、右肘の怪我でマネジャーに専念。「悔しさもあったが、将来にいきてくると思って選手は断念しました」。大学進学の際にはマネジャーとしての素質を評価され、推薦で野球部に入部することができた。

 転機となったのは昨年11月。マネジャーに専念した高校2年生から「全く練習やトレーニングはしてなかった」というが、遊び感覚で何気なくボールを投げるとスピードガンで151キロを計測。その後も打撃投手としてサポートしていたが「ちゃんと投げると150キロ出ます」と首脳陣にアピールし、同大学では異例となるマネジャーから選手への転身が認められた。

 約1年間、本格的にトレーニングを続け最速は153キロまで成長。身長188センチの長身を生かしフォーク、カーブ、カットボール、ツーシームと多彩な変化球も操る。まだ、リーグ戦は未登板だが「しっかり練習して来年、4年生から勝負。プロ野球選手を目指したい」と意気込みを口にした。

 コロナ禍によって失われた夏の甲子園。3年の月日を経てたどり着いた舞台に「あの時の悔しさ、未練はもうなくなりました」ときっぱり。わずか3年でマネジャーから150キロ右腕への“飛び級”に成功し「めちゃくちゃ人生は変わりました」と感慨深げに振り返った。

 試合は1-1の引き分けに終わったが、全力でプレーし当時の仲間と笑顔いっぱいで甲子園を楽しんだ。「高校の時に甲子園があればマネジャーだった。今はこのマウンドに立てたことは本当に幸せ。皆で楽しむことができた」と、充実した表情を見せていた。

(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)

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