メジャー移籍に「意地悪はしません」 平良に高橋、志望者続々…西武が示すスタンス
先発転向1年目で結果を出し、来季はタイトルもエースの座も開幕投手も…
西武の平良海馬投手は1日、所沢市の球団事務所で契約更改交渉に臨み、8000万円増の年俸2億5000万円(金額は推定)でサインした。中継ぎから念願の先発へ転向し1年目の今季、規定投球回数をクリアし11勝7敗、防御率2.40の好成績をマーク。改めて「常に目標を高く設定してやっていかないと成長できない。メジャーに行きたいという気持ちはずっとあります」と明言した。これに対し、渡辺久信GMの反応は──。
平良はちょうど1年前、2019年のオフから訴え続けてきた先発転向が一向にかなえられないことから、契約更改交渉でサインを保留。「先発の方が中継ぎの倍のイニング数を投げられるし、チームにも大きく貢献できる」と主張して“徹底抗戦”の構えを見せ、先発転向を勝ち取った経緯がある。
実際、今季の投球回数は、昨季(57回2/3)の倍以上の150回に達し「中継ぎの時よりチームに貢献したと思っていますし、自分の価値を上げることもできたと思います」と胸を張った。
「先発に慣れてきた部分があるので、来季はしっかりトップ争いができるように頑張っていきたい」と、今度はタイトル奪取に照準を合わせる。「一番欲しいのは最多奪三振」と言い切った。今季の平良の153奪三振は、オリックス・山本由伸投手の169、ロッテ・種市篤暉投手の157に次ぐパ・リーグ3位。しかもトップの山本は今オフ、ポスティングシステムでメジャーへ移籍することが濃厚で、なおさら平良の戴冠の可能性は高まりそうだ。
さらに平良はチーム内でも「(高橋)光成さんがエースと呼ばれているので、競争しながら超えられるように、光成さんのいい部分を吸収しながらやっていきたい」と意欲満々。最近3年連続で高橋が務めている開幕投手についても「もしチャンスがあれば、やりたいなと思います」と対抗馬に名乗りを上げた。自分が望んだ役割を与えられて結果も出し、いい意味で貪欲さが増してきたようにも見える。
「FAは選手の権利だが、ポスティングは球団の権利」が基本
そんな平良にとって究極の目標は、メジャーでの活躍のようだ。この日の契約更改交渉の席でも「自分がどうしていきたいか、どうなりたいかという将来的な話はしました。それに対してどうこうは、今はないです」とメジャー移籍の意思が話題に上ったことをほのめかした。
一方の渡辺GMにしてみればこのオフ、ポスティングシステムで早期メジャー移籍を望む高橋と代理人を交えて会談し、今オフの移籍断念を取り付けたばかり。メジャー志願続出は、編成の責任者として頭の痛いところだろう。
「FAは選手が獲得した権利なので、どう使おうとも、我々はしっかり尊重するが、ポスティングは球団の権利。平良もそこは納得していると思う」とした上で、「初めての先発で今季1年間ローテーションを守り、結果も出してくれただけに、彼が抜けるのはすごく痛い」とチーム事情を説明。それでも、「当然本人には1年でも早く一番(レベルの)高いところで、という志があると思う」と理解も示す。
FA権取得を前に主力選手を長期契約で縛るケースもあるが、渡辺GMは平良に関しては「長期契約のオファー? そんな意地悪はしないですよ。本人は1年でも早く(メジャーへ)行きたいのだから、応じるわけがないではありませんか」と笑い飛ばし、「ウチはそういうスタンスではありません。結果を出してチームに貢献し、みんなが認めて『行って来いよ』という時期が来たら、今までも出してきました」と語る。
西武はメジャー移籍の強い意志を持ち、日本でそれにふさわしい結果を出した選手に対しては、強いて引き止めず背中を押してきた。その寛容な姿勢は、松坂大輔氏、現ブルージェイズ・菊池雄星投手の頃から変わらない。ポスティングという“ニンジン”が若い選手を活性化し、さらにその下の世代の突き上げまで促すなら理想的だ。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)