「勝ち取るしかない」自分の居場所 決意の8年目…山岡泰輔が睨む4連覇への“展望”

オリックス・山岡泰輔【写真:小林靖】
オリックス・山岡泰輔【写真:小林靖】

オリックス・山岡泰輔「勝負の年かなと」

 自分の役割は心得ている。来季でプロ8年目を迎えるオリックスの山岡泰輔投手が、静かに口を開いた。

「言われたところで投げるのが第一ですが、(プロ)8年目ですし4連覇がかかっている来年は、先発投手が2人抜けて、弱くなるっていうように思われるので、踏ん張りどころじゃないですけど、それでもっていうところを見せるシーズンだと思う。だから、勝負の年かなと思っています。シーズンを通していい成績が残せるように投げていくだけかなと思っています」

 今季は先発、救援で31試合に登板し、防御率2.30の成績を残した。「難しいシーズンだったとも思いますし、それを経験できたというのは良かったと思います。プラスにしていきたいですね」と振り返ったように、与えられた役割を全うした。

 経験豊富な山岡だからこそ、こなせたシーズンだった。開幕3戦目の西武戦(4月2日、ベルーナドーム)で先発し、5回2/3、102球、3安打、5奪三振、3四球、1失点。勝ち星には恵まれなかったが、まずまずのスタートを切った。しかし、2戦目の登板となった4月9日の日本ハム戦(京セラドーム)は、一転して中継ぎ起用だった。

 先発したジェイコブ・ニックス投手が2回4安打4失点で降板。2番手として3回から登板し、5回2/3を106球、6安打3失点。開幕直後に訪れた「第2先発」では、ニックスの先発投手としての適性を探りたいという首脳陣の意向があったとみられる。開幕ローテーションを任された山岡にとって調整が難しい役目も受け入れ、こなしてみせた。

オリックス・山岡泰輔【写真:荒川祐史】
オリックス・山岡泰輔【写真:荒川祐史】

救援に配置転換の“理由”

 シーズン3戦目(18日・楽天戦、京セラドーム)では再び先発に戻り、5回1/3を86球、3安打無失点と先発の責任は果たしたが、勝ち星をつかむことはできなかった。その後、13試合目の7月9日の西武戦までに1勝1敗と成績を残せず、以後、中継ぎに配置転換。中嶋聡監督には、先発のマウンドで球数が増える4、5回に崩れるケースがあった山岡を、短いイニングで“再生”するとともに中継ぎ陣を活性化させ、勝利の方程式を確立する狙いがあったようだ。

「4、5回でもたつくというのは何か(原因)があるのかな。先を考えずに飛ばしていけるのはいいかと」とは、中継ぎに転向した際の中嶋監督の評価だ。山岡は、指揮官の期待に応える場面が何度もあった。7月23日の日本ハム戦(ほっともっと神戸)では1-1の7回から3番手で登板。マルティネスを見逃し三振、石井を二ゴロ、伏見を遊ゴロと14球で仕留め、その裏の5得点の猛攻撃につなげ今季2勝目を挙げた。指揮官は「短いイニングでの爆発力はやはり素晴らしいものがあります」と絶賛した。

 一方、8月18日の日本ハム戦(京セラドーム大阪)では、守護神・平野佳寿投手の後を継いで、抑えで登板した。山下、宇田川、平野佳と継いで迎えた1-1の10回から登板。3イニングを29球、2安打4奪三振、無四球、無失点で引き分けに持ち込んだ。

 これまでのキャリアが生かされたマウンドだった。「ベストゲームはなかなかないのですが、いい試合だったと思います。最後(12回)まで投げ切るんだろうなとは思ってたので、いけるところまでいこうと」と振り返った山岡。先発、抑えのどちらにも対応できたのはこれまでのキャリアと「伝家の宝刀」スライダーを中心に三振が取れ、打たせて仕留める高い技術力があるからだ。

 来季のマウンドを、山岡はどのような姿で迎えるのだろう。「どっちも準備をします。前も後ろも、どっちも準備してくれっていうように言われてるんで」。すでに首脳陣から両方の準備をしておくような指示があったことを明かす。

 取り組むのは「ボールの質を上げること」だという。キレのよいストレートに多彩な変化球を自在に操って来ただけに、新しいことに挑戦するのではなく、微妙な精度も含め「全部を上げて、トータルで上げればいいかな」と言う。

山岡が語った山本由伸は「オリックスの絶対的エース」

 先発にこだわりがあるわけではないが「オリックスの絶対的エース」(山岡)と認めて来た山本由伸(16勝6敗)や山崎福也(11勝5敗)が抜けた穴を埋める心づもりはできている。

 ドラフト直後の入団交渉で、スカウトを通じ当時の福良淳一監督から寄せられたメッセージは「チームを変えてくれる投手に」だった。髪の毛を金髪に染めるなど外見からは派手なイメージを与えるが、実際は美容師にお任せ。むしろ、意気に感じて行動するタイプで、育成選手時代の東晃平投手に夏場に体力を維持する方法をアドバイスするなど、若手のリーダーとして投手陣を引っ張って来た。

「実際にそこ(4、5回)で点を取られていることが多いと思います。点差が4点、5点あればまた違ってくるとは思いますが、僅差でピンチを迎えた時にそういうケースが多く、そう映ってしまいます。僅差でも、その球数でも『いける』と思ってもらえるように投げていくしかないですね。やっぱり信頼を勝ち取るしかないですね」

 先発投手としての厳しい評価を自覚しつつ、信頼回復をはかりチームを先頭に立って引っ張る。「勝負の年」とは、自身に向けた言葉でもある。

〇北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2000年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。

(北野正樹 / Masaki Kitano)

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