ファーム2冠の20歳が異例のコンバート 捕手挑戦にGM後押し…4連覇へオリが“大革命”

オリックス・池田陵真【写真:真柴健】
オリックス・池田陵真【写真:真柴健】

オリックス・池田陵真外野手の捕手転向に福良GM「本人も挑戦したいと」

 常勝軍団には、柔軟な発想と決断する勇気がある。オリックスの池田陵真外野手は、11月に高知で行われた秋季キャンプで大きな注目を集めていた。マスクを被り、プロテクターを装着してブルペンで声を上げていた。福良淳一GMは、池田の捕手転向が本格的な取り組みであることを明かした。

「あの打撃力を生かすためですね。(捕手転向で成功する)可能性があると思って、です。それで(中嶋聡)監督ともいろいろ話をしました。(中学時代に)経験もあるということなので1回、挑戦してみようと。本人と話したら本人も挑戦したいと言うので。いろんな可能性が広がると思うんですよ」

 11月7日から始まった秋季キャンプ初日のブルペンに、キャッチャー防具をつけた姿で現れた池田。ヘルメットは「23番」が刻まれた伏見寅威捕手(現日本ハム)のもので、プロテクターは今オフに自由契約となった中川拓真捕手(現・火の国サラマンダーズ)からの借り物だったことから、SNS上では「打撃を生かすために捕手から外野手への転向はあるが、逆のような気がする」「キャンプ限定で、違った視点で見ることで池田のプラスになればいいけど」と疑問の声が上がっていた。

 期間限定の挑戦という見方もあり「出場機会だけなら若月、森がいる捕手より、層の薄い外野の方がよっぽどチャンスがあると思うんだけどなぁ」と、捕手転向への疑念の声も数多くみられた。

 そんな声を横目に、福良GMは「本人がどう考えるか、まだ分かりませんが、1年間は見てみようと思っています。ゲームをやってみて、どういう姿を見せるのか」と、来季の本格的な捕手挑戦を明言した。主にウエスタン・リーグでの試合出場になる方向だが、池田の奮闘次第では京セラドームでマスクを被る可能性はある。

福良GM「よほどのことがない限り、いくら三振をしてもエラーしても使い続ける」

 オリックスの外野陣は、規定打席到達者が中川圭太内野手のみ。ただ、“ラオウ”こと杉本裕太郎外野手や小田裕也外野手、福田周平外野手、野口智哉内野手、茶野篤政外野手に加え、森友哉捕手も若月との兼ね合いで外野を守る機会が増えてきた。また、広島から国内FA権を行使した西川龍馬外野手も獲得しており、層は厚い。

 捕手陣は若月や森、石川亮捕手らに加え、ドラフト4位で堀柊那捕手(報徳学園高)を獲得したものの、数年後を見据え若手の育成が急務となっている。今季2軍で首位打者と最高出塁率の2冠を獲得した池田の打力を生かす戦略は、チーム事情とも合致している。

 池田は「(選手としての)幅を広げられたらいいなと思っていましたし、幅広く守れる方が使い勝手がいいというか、出場機会が増えると思います。そういう意味でもどのポジションでも頑張ろうと思っています」と前向き。さらに「下半身をすごく使うのがキャッチャーだと思います。どうしても上半身で打ちにいってしまう癖があるので、下半身をもっと使えていければバッティングも良くなるかと思います」と打撃向上の効果にも期待する。

 若手選手の育成に定評があるオリックス。野手では宜保翔内野手が高卒プロ1年目の2軍戦に111試合に出場(417打席)したほか、来田涼斗外野手、元謙太外野手の新人年にも「よほどのことがない限り、いくら三振をしても、いくらエラーしても使い続ける」(福良GM)と、徹底して起用し続ける方針を貫いてきた。

 池田が来季の1年間は捕手に挑戦し続けるというのも、フロント、現場が一体となった「ブレない育成方針」が確立しているからである。史上初めて育成出身選手として開幕スタメンを勝ち取り、初安打、初盗塁を記録した茶野らを積極的に登用する際の心情を、中嶋監督は「使う方の勇気だけです」と表している。起用して、結果を出させる。オリックスの強さの秘密はこんなところにもある。

〇北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2000年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者一期生。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ

(北野正樹 / Masaki Kitano)

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