怒られても…小学生に「切り替えわからない」 虎ドラ2が説く打撃向上への“恐れなさ”

バッティング指導を行った阪神・井上広大【写真:喜岡桜】
バッティング指導を行った阪神・井上広大【写真:喜岡桜】

2019年夏の甲子園制覇…阪神・井上広大による丁寧な打撃指導

 NPB球団が本拠としていない地域での野球振興を進めている阪神と、四国アイランドリーグplus・徳島インディゴソックスがコラボした野球教室が、昨年12月末に徳島市の室内練習場「インディゴ・テクニカルファクトリー」で開催され、徳島県内の小・中学生が、阪神の白仁田寛和アカデミーコーチ、栄枝裕貴捕手、井上広大外野手、新入団のドラフト2位・椎葉剛投手から直接指導を受けた。

 バッティング指導は、井上が担当した。大阪・履正社時代には、2019年夏の甲子園で同校初の全国制覇に貢献するなど高校通算49本塁打を放ち、同年に阪神からドラフト2位で指名を受けた強打者が、ボールを遠くに飛ばすために必要な要素の中から、すぐに取り入れられる3つのポイントを伝えた。

 まず1つ目は、ボールのどこを狙うか。子どもたちのティーバッティングを見た井上は、まだ筋力が発達していない少年期には「正しいアッパースイングの軌道でボールの下半分を捉えても、フライになったりして飛距離が出にくい」とし、少ない力を最大限生かすには「ボールを真正面から打つことが一番いい」とアドバイスを送った。

 その狙い通りにボールを捉えるのは簡単なことではない。「本塁打ならボールの真芯から3ミリ下。だけど、プロでも狙って打てるものじゃない」。基本に忠実な練習を多くこなすことが鍵になると説いた。

身振り手振りを交えて子どもたちに指導する井上【写真:喜岡桜】
身振り手振りを交えて子どもたちに指導する井上【写真:喜岡桜】

バットに伝わる力の“差”を体感…脇を締める必要性を理解

 2つ目は、インパクトの衝撃に負けない腕の使い方。この日、ボールを遠くへ飛ばすことに注力するあまり、体の使い方への意識がおろそかになり、力いっぱいスイングしたときに脇が開いてしまう参加者が散見された。「目の前に大きな岩があるとしよう。脇が開いた状態と、閉じた状態、どっちの体勢で押した方が岩は動きやすいと思う?」と問いかけ、実際に両手で岩を押すポーズをとるなどして、子どもたちに考えさせた。

「バッティングも同じこと。脇が開いているとバットがボールの強さに負けてしまい、ゴロやファウルになってしまう。しっかりと脇を締めて、バットを振り抜く。そうすればボールは前に飛んでいく」。脇の開閉とバットに伝わる力の関係を知るために、インパクトの位置で静止させたバットを正面から手で押すなど、子ども同士で体や道具を使ったレクチャーが行われ、近くで見守る保護者も納得の表情を浮かべていた。

 3つ目は、試合での凡打を恐れないことだ。野球には失敗がつきもの。小学生のときにソフトボールをしていた井上も、なかなか打てずに監督からよく怒られていたという。しかし、打席で力いっぱいバットを振り続け、ボールと真摯に向き合うことが打撃向上につながったと明かす。

「よく『失敗した後の切り替えが大事』って言いますけど、小学生のときは『切り替え』とかわからないと思うので。(試合では)もうただガムシャラにバットを振って、プレーする。そんな感じでいいと思います」

 小・中学生が理解できるように配慮した指導が、少しでも子どもたちの成長につながればと願う井上。将来、甲子園の空にきれいな放物線を描くことが、子どもたちができる最大の恩返しだ。

(喜岡桜 / Sakura Kioka)

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