吉田正尚に入れた“断りの連絡” 戦力外→育成5年目の木下元秀、買わなかった航空券に見えた覚悟

オリックス・木下元秀【写真:真柴健】
オリックス・木下元秀【写真:真柴健】

広島を戦力外になり、オリックスに育成入団した木下「早く馴染みたい」

 新天地で才能を開花させ、一気に駆け上がる。広島を戦力外となり、2024年にオリックスに移籍した木下元秀外野手が、大阪・舞洲の球団施設で懸命に汗を流している。2019年に育成ドラフト2位で広島に入団。4年間、赤いユニホームで過ごしたが支配下選手登録は勝ち取れず、新しい“職場”で再び夢を追う。

 22歳の若き大砲候補は、新天地でも選手寮に住むことに決めた。2023年12月上旬に寮生活をスタートしており「(移籍のため)入らなくてもいいよと球団の方に言ってもらったんですけど、絶対こっち(寮)の方が練習に集中できる。(舞洲は)サウナもジムもあって、凄く良い施設だと思います」と真剣な表情で話す。

 プロ入りから過去3度のシーズンオフは、敦賀気比の先輩にあたるレッドソックスの吉田正尚外野手に“志願”して合同自主トレに参加していた。しかし、今回は航空券を買わなかった。

「まだオリックスに来てから、ご挨拶ができていない人が多いので、舞洲で練習させてもらおうかなと思っています。だから、今年は正尚さんの自主トレは『申し訳ないですが、行けません』と伝えさせてもらいました。1年目のオフから(沖縄自主トレに)行っていたので、3年間お世話になりましたね。僕なりの決意です。今年は初めての環境なので、少しでも早く馴染みたいんです」

オリックス・木下元秀(左)とレッドソックス・吉田正尚【写真:真柴健】
オリックス・木下元秀(左)とレッドソックス・吉田正尚【写真:真柴健】

対戦相手として見ていたオリックスベンチは「楽しそうだった」

 広島で育成選手として過ごした4年間。新しい環境に身を置く今季は、大卒1年目と同じ年齢だけに目の色が違う。「3連覇しているチームですし、競争も激しいと思う。ただ、なんとか1軍の戦力になりたい。そうじゃないと、獲ってもらった意味がないと思うので。凄く楽しみな1年が始まりますね」。笑顔の奥には、固い信念がある。

「まずは1軍に上がることですね。バッティングを教えてくださる(吉田)正尚さん、(西川)龍馬さんに恩返ししないといけないと本気で思っているので。そのためには支配下選手登録されないと。(1軍に)上がって報告できるように頑張ります」

 これまでの4年間はウエスタン・リーグで対戦相手としてオリックスベンチを見てきた。「めちゃくちゃ雰囲気が良かったです。選手たちを見ていて楽しそうだった。僕もチームを盛り上げられるようにしたいと思います」。ムードメーカーとしての期待もかかる。

 木下は2023年11月の高知秋季キャンプでも“練習生”としてチームに合流していた。首脳陣から「やりたいように、まずは練習してみてほしい。わからないことがあれば聞いてほしいと言ってもらいました」と明かし、「やりやすい環境ですね。厳しさの中に優しさがあって、ありがたいです」と感謝した。

 高校通算38本塁打、プロ1年目には2軍で7本のアーチを描いた。持ち前のパワフルな打撃に、天才的な打撃理論がマッチすれば……。凛々しくなった顔つきに、夢は広がるばかりだ。

○真柴健(ましば・けん)1994年8月、大阪府生まれ。京都産業大学卒業後の2017年に日刊スポーツ新聞社入社。3年間の阪神担当を経て、2020年からオリックス担当。オリックス勝利の瞬間に「おりほーツイート」するのが、ちまたで話題に。担当3年間で最下位、リーグ優勝、悲願の日本一を見届け、新聞記者の卒業を決意。2023年2月からFull-Count編集部へ。

(真柴健 / Ken Mashiba)

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