リーグ最低打率「.220」はなぜ？　ロッテ二塁手が抱えたジレンマ…ヒットにならぬ不運

2023年のパ平均打率は.241…規定到達22人の内18人が上回った

　近年の日本球界では、投高打低の傾向が強まりつつある。2023年のパ・リーグ全体の平均打率は.241。リーグ平均の出塁率は.309、OPSは.664と、やや控えめな水準となっている。今回は2023年のパ・リーグで規定打席到達選手の成績を、「リーグ平均打率」という観点から確認。加えて、打率に大きな影響を及ぼす「BABIP」という指標も確認し、パ・リーグの「平均値」について考える。

　2023年のパ・リーグで、リーグ平均以上の打率を記録した選手は18人。打率.300以上を記録したのは頓宮裕真捕手と近藤健介外野手のみだった。規定打席に到達した22人のうち82％に当たる18人がリーグ平均打率.241を上回った。

　また、打率がリーグ平均を上回った選手のうち、出塁率がリーグ平均（.309）を下回ったのは今宮健太内野手のみだった。OPSは.700前後が標準値とされているが、2023年のリーグ平均OPSは.664。打率がリーグ平均を超えた18人のうち15人が、OPS.664を上回っていた。リーグで唯1人OPS.900超えを果たした近藤をはじめ、打率.290以上を記録した4人はいずれもOPS.860以上だった。

　一方、規定打席に到達した22人のうち、打率がリーグ平均を下回ったのは4人。そのうち、安田尚憲内野手は24歳、野村佑希内野手と山口航輝外野手は23歳と、伸びしろを残す年齢の若手が多くを占めた。

　ただし、出塁率では安田と山口がリーグ平均の.309を上回り、野村も平均と同水準の数字を残していた。この3人はOPSもリーグ平均の.664を超えていた。一方で、打率がリーグ最下位の.220だった中村奨吾内野手は、規定打席到達者の中で唯一人、出塁率も.300を割り、OPSもリーグ平均を大きく下回った。31歳は通算打率.251、通算OPS.710を記録しているだけに、2024年は打撃面での復活にも期待したい。

打率リーグ最下位の中村奨吾は指標BABIPも低かった

　ここからは、「BABIP」という指標にフォーカスする。BABIPは本塁打を除くインプレーとなった打球が安打になった割合を示す数値で、一般的に選手の能力によって影響を受ける部分が少なく、運に左右されやすい指標であるとされている。規定打席到達者のうち、打率が下から10位以内に位置した選手たちの中で、楽天・小深田大翔内野手を除く9人のBABIPが、一般的に平均値とされる.300を下回った。また、NPB1年目だったデビッド・マキノン内野手を除く9人のうち、2023年のBABIPがキャリア平均の数字を上回っていたのは、山口ただ1人だった。

　BABIPは選手によって差が出やすく、通算のBABIPが.300を大きく上回っている選手もいる。しかし、打率が下から10番までの選手の中で、通算BABIPが.300を上回っているのは、小深田、アリエル・マルティネス捕手、野村の3人のみとなっている。また、今季の打率が通算打率を上回っていた選手は、グレゴリー・ポランコ外野手、今宮、山口のみ。ポランコはNPB在籍2年かつ、上昇幅が.001のみということを考えれば、ほとんどの選手が通常よりも苦しいシーズンを送っていたことがうかがえる。

　BABIPに恵まれない選手が打率ランキングの下位に多く存在したという事実は、BABIPという指標の重要性を端的に物語っている。とりわけ、中村奨、野村、マルティネスは、2023年のBABIPと通算BABIPの間に.028以上の大きな差が生じており、打率が低下した理由の一端が示されている。ただし、打者のBABIPは長いスパンで見れば、おおむね選手ごとの基準値に収束していく傾向にある。

　このまま来季も投高打低の傾向が続くようであれば、「リーグ平均打率」というラインの重要性も、これまで以上に増すことになる。表面的な数字から来る印象からもう一歩踏み込んだ評価ができる「リーグ平均」という概念は、今後のNPBにおいて客観的な判断を行ううえで貴重なものになりそうだ。

（「パ・リーグ インサイト」望月遼太）

（記事提供：パ・リーグ インサイト）