非公開が生む人的補償の“不幸” 元球団トップが提言「プロテクトの意味あるのか」

ソフトバンクから西武に移籍した甲斐野央【写真:荒川祐史】
ソフトバンクから西武に移籍した甲斐野央【写真:荒川祐史】

ダイエー、ロッテなどで球団経営に携わった瀬戸山氏「どちらもリスクを背負う」

 2024年シーズンを前に球界を揺るがしているのが“人的補償問題”。一定期間チームでプレーした選手が、他球団と自由に交渉し、移籍できるフリーエージェント(FA)権を行使すれば必ず付きまとう制度。ダイエー(現ソフトバンク)、ロッテで球団経営にも携わった瀬戸山隆三氏は「現行の制度ではどちらもリスクを背負うことになる。第三者機関、行司役が必要」と、自身の見解を口にする。

 FAで移籍する選手はA、B、Cとランク付けされ、それぞれに補償内容が異なる。旧所属球団は金銭または、人的補償を選択することができ、今オフに人的補償として指名されたのは、ソフトバンクから西武に移籍した甲斐野央投手、オリックスから広島に移籍した日高暖己投手の2人だった。

 その中でも、大きな騒動に発展したのが、西武からFA権を行使しソフトバンクに移籍した山川の人的補償。一部報道では和田毅投手の名前も挙がっていたが、蓋を開ければ甲斐野の移籍で決着した。瀬戸山氏は「事の真相は分からない」と前置きしながら、現行制度の“抜け道”を防ぐ必要があると指摘する。

 FA選手を獲得した球団はドラフトで指名した新人選手や、外国人選手を除く支配下選手から28人までプロテクトできる。だが、プロテクトから漏れ、指名された選手はこれを拒否する権利はなく、当該球団のやり取りで行われたプロテクトリストが公になることはない。

「現状のルールで球団はリスクを背負って選手を獲得しなければいけない。28人という難しい選択を迫られるのも分かります。ただ、人的補償のリストは第三者機関が入らなければ、今回のようなことが起きてしまう。全てオープンにする必要はないが、例えばコミッショナー事務局にも共有しておく。プロテクトの意味はあるのかという話にもなる。ルールがあってないようなことは起きてはならない。これまで以上に選手がFA権行使をためらうことになる可能性もある」

 選手にもプライドがあり、これまでチームに貢献してきた自負もある。生え抜きのベテラン選手になれば尚更だ。個人事業主として評価を高め、より高いサラリーを求めるのはプロ野球の世界に限ったことではない。だが、共に戦ってきた仲間が、不本意な形で自身の“補償”として他球団に移籍するのはいかがなものか。

 これまでフロント側として様々な移籍に関わってきた瀬戸山氏は「選手がバッシングを受けるのは違う。今後も人的補償で揉めるなら、翌年のドラフト上位指名権を譲渡するなど違ったリスクの取り方を考える必要もある」と語った。

(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)

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