途絶えた2桁盗塁「反応できなくて…」 塁上で“違和感”…荻野貴司が吐露した本音
独占インタビューに応じたロッテ一筋15年目の荻野貴司外野手
ロッテは今季、1974年以来となる勝率1位でのリーグ優勝、2010年以来の日本一に向け、積極的な補強を続けている。若手の台頭も目立つが、忘れてはいけないのがベテランの存在だ。チーム最年長38歳の荻野貴司外野手が「Full-Count」の独占インタビューに応じた。前編は「途絶えた2桁盗塁の本音」。
プロ15年目を迎える2024年。荻野の自主トレは毎年恒例となっている本拠地・ZOZOマリンスタジアムで行われた。自身の体を確認するかのように、刺激を与えキャンプ、シーズンに向け準備を進めている。
「去年は2回も肉離れをしてしまったので。常に怪我をしないように意識はしている。色々、試しながら合う方法を見つけていきたい。そこは永遠の課題、テーマですね」
昨季は「1番・右翼」で開幕を迎えたが、右太ももの肉離れなど怪我に悩まされ50試合の出場に留まった。打率.240、1本塁打19打点。新人から13年続けてきた2桁盗塁もわずか1個に終わった。荻野といえば塁上を走り回る“スピードスター”。今年10月で39歳を迎えるベテランだが、新人の頃からプレースタイルはほとんど変わっていない。
昨年のソフトバンクとのクライマックスシリーズ・ファーストステージ。第1戦でも1番打者として起用され、ポストシーズン最年長となる先頭打者本塁打を記録するなど打線を牽引した。走力が武器の選手は年齢による衰えが、如実に出ることが多い。だが、荻野はそれを感じさせない。
「無理に何かを変えることはなくて。ありのまま、自分のスタイルを出すだけ。直接関係あるか分からないですが、可動域を広くしたり、筋肉や体を上手く使えるようになったのかなとは感じています」
新人からの2桁盗塁は13年連続でストップ「途切れたら寂しかった」
昨年は選手の判断でスタートを切れる「グリーンライト」がなくなり、自身もサインを待つ立場となった。怪我などもあり1盗塁に終わったが、塁上ではこれまでになかった“違和感”を抱いていたという。
「盗塁の意識は常に持っています。でも、去年に関しては塁上でリードした時点で投手に反応できなくて『いけへんな』みたいな感覚があった。今までは常に行くと考えていたけど、それがなくなって。ホッとしたじゃないですけど、ちょっとだけ『いかなくていいんや』と、頭の片隅にありました」
ルーキーイヤーの2010年には開幕から46試合で25盗塁を記録する衝撃的なデビューを飾り、2021年には36歳で史上最年長盗塁王。紆余曲折がありながら、ここまで通算260盗塁を記録している。昨年途切れた2桁盗塁は「あまり気にしてなかったけど、いざ途切れたら寂しかった」。2024年シーズンはもう一度、原点に戻り、先の塁を貪欲に狙っていく。
「やっぱり盗塁はしたい。塁に出たらワクワクするんですよ。打席では感じられない緊張感がある。もちろん、アウトになれば流れが変わってしまう。だけど、もう一度、その緊張感の中でプレーをしたい。だから、首脳陣の方に『あいつはまだ走れる』と思わせないといけない」
ここ数年は膝の痛みもなくなり「肉体的には昔に比べて楽」と手応えも感じている。万全の状態でシーズンに入ることができれば、まだまだ1番打者としてチームに貢献できるはずだ。「痛みと戦う時間が減った分、いい方向に。進化した姿を見せたい」。打って、走って、守れる、異次元のベテランが、まだまだチームを牽引していく。
(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)