くすぶる若手へ「僕が出ていたらダメ」 物足りぬ底上げ…現役へのプライドと葛藤
プロ15年目を迎えるロッテ荻野が目指す“初のリーグ優勝”
ロッテは昨季、終盤に追い上げをみせ2年ぶりのリーグ2位となったが、クライマックスシリーズ(CS)ではファイナルステージでオリックスに敗れた。リーグ3連覇の王者との差はどこにあるのか。チーム最年長38歳の荻野貴司外野手が「Full-Count」の独占インタビューに応じた。後編は「覇権奪回に必要なピース」。
戦国パ・リーグで、悲願の“優勝”を奪いにいく。ロッテは2010年に日本一に輝いたが、レギュラーシーズンは3位。CSからの“下剋上”でたどり着いた頂点だった。2005年はプレーオフで優勝を手にしたが、レギュラーシーズンの勝率は2位だった。勝率1位でのリーグ優勝は1974年まで遡る(当時は前後期制)。荻野自身も「今年で15年目ですが、リーグ優勝は今までない。パ・リーグで1位。ここが一番、目指すべき所」と決意を口にする。
チームはこのオフに前DeNAのネフタリ・ソト内野手を獲得するなど、積極的な補強を見せている。26本塁打でタイトルを手にしたグレゴリー・ポランコ外野手も残留。上手く噛み合えば他球団の脅威となる強力打線が完成する。ベテランの荻野もコンディションさえ整えば、1番打者として期待されている。だが、本人は現状のチームをこう口にする。
「客観的に見ると本当は僕が出ていたらダメだと思う。もちろん、選手として負けたくない、レギュラーとして試合に出る気持ちは誰よりも強い。ただ、もっと底上げ、下からの力が必要。本来なら藤原(恭大)、安田(尚憲)、山口(航輝)らはバリバリのレギュラーとしてやっていかないといけない選手だと思う」
チームの命運を握る藤原、山口、安田ら期待の若手たち
藤原、山口、安田の3人は昨季、自己最多の出場数をマークし、CSを含め経験を積んだ。リーグを代表する野手になるだけのポテンシャルを持ち合わせているが、成績をみるとまだ物足りない。「僕自身も若い時はそう思われていた。何かがきっかけで変わる。そこは自分で苦しんでもがき掴んでいくものだと思っている」。常勝軍団の構築には若手の台頭が必要不可欠だ。
昨季は最終戦で勝ち2位となったが、リーグ3連覇を果たしたオリックスとのゲーム差は15.5。荻野も「大きな差は感じました」と振り返る。勝負所での集中力、ビハインドの展開でも一気に流れを変える力があったという。しかし、今季は独走を許さない。「若い力を含めて個々のレベルアップが一番。戦える力は持っている」と断言する。
「そこまでベテランという感覚はなくて。ちょっとお腹も出てきましたよ(笑)。球団から必要ないと言われるまで現役を続けたい。チームとして優勝、個人としては本当に1年間1軍の戦力として働きたい」
身長172センチとプロ野球の世界では小柄な部類に入る。だが、鍛え抜かれた肉体と培った技術、経験値を武器に背番号「0」は15年目のシーズンを迎える。
(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)