県大会1次予選敗退からの“下剋上” 6年ぶり甲子園をもたらした「3つのモラル」

選抜出場が決まった中央学院の選手たち【写真:宮脇広久】
選抜出場が決まった中央学院の選手たち【写真:宮脇広久】

選抜出場の中央学院は、昨秋千葉大会1次予選で敗れた

 ミラクル快進撃は止まらない。中央学院(千葉)が第96回選抜高校野球大会の出場校に選出された。甲子園出場は2018年に春夏連続出場して以来6年ぶり。新チーム結成直後、昨秋の千葉大会1次予選で敗れたが、敗者復活戦を勝ち上がり、本戦を制覇した。関東大会で8強入りし、“聖地”への切符をもぎ取った。主将の中村研心内野手(2年)が苦難の道程を振り返った。

 ギリギリの選出だった。中央学院は昨秋の関東大会で8強入りしたが、関東・東京枠は「6」で、最後の1枠を、同じ関東8強の桐光学園(神奈川)や東京大会準優勝の創価と争う展開だった。

 出場校の選考会が行われた26日。朗報はグラウンドで練習中、校内放送でもたらされた。中村主将はその瞬間を「みんながガッツポーズして喜んでいるのを見ていたら、本当に行けるんだと思えてきて、副主将の颯佐(心汰内野手=2年)と抱き合って号泣してしまいました」と明かした。

 新チーム結成当初から前チームのレギュラーが多く残り、周囲の期待は高かった。ところが、昨秋の千葉大会1次予選で四街道高に1-4で敗戦。中村主将は「関東大会優勝を目標に掲げていたのに、県大会の予選で負けてしまい、ふがいなかったです。去年から試合に出させてもらっていた選手が多く、慢心があったかもしれません」と猛省している。

 ただし、この段階で敗れても、まだ敗者復活戦が残されていた。苦汁をなめた中央学院ナインは、相馬幸樹監督から巻き返しのための行動指針として「3つのモラル」を授けられた。走姿顕心(走る姿に心構えが表れるという意味)、堅守足攻、ネバーギブアップ──である。

「誰にでもできるはずの全力疾走を徹底し切れていなかったことが、予選の負けにつながったと思います。まずは(一塁を)全力で駆け抜けるとか、そういう細かいことを徹底しました」と中村主将は振り返る。

中央学院・中村研心【写真:宮脇広久】
中央学院・中村研心【写真:宮脇広久】

4番の主将は164センチ、66キロ「長打より、つなぐことが自分の役割」

 敗者復活戦を勝ち抜き、県大会の本戦でも強豪を連破。決勝では昨年春夏連続甲子園出場の専大松戸に7-1で快勝し、優勝にこぎつけた。関東大会では初戦の白鴎大足利(栃木)に10-2で8回コールド勝ち。続く準々決勝で健大高崎(群馬)に敗れたものの、3-4のシーソーゲームを演じ強烈な印象を残した。

“3つのモラル”を授けた相馬監督は「予選に負けて混乱した状態の中で、選手たちのストロングポイントを突き詰めていこうと考えました」と説明する。

「堅守足攻」の言葉に表れるように、チームの持ち味は投手を中心とした守りと機動力、それに粘り強さだ。「走力は全国屈指と自信を持っています。関東大会終了後は主に守備力を鍛えていて、そこが全国レベルになれば(甲子園で)十分戦えると思います」と相馬監督。4番を打つ中村主将も164センチ、66キロと小柄で「自分たちの強みは“足”。自分は身長も低いので、長打というより、つなぐことが役割だと思っています」と自覚している。

 中央学院は過去、2018年の春に甲子園初出場し、第100回の記念大会だった同年夏にも「西千葉代表」として出場したが、いずれも初戦敗退。中村主将は「まずは自分たちの代で少なくとも絶対1勝はして、歴史に名を刻みたいです」と力を込めた。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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