巨人21歳は「見ているだけで夢がある」 白熱した“3者会談”…松井秀喜氏が寄せる期待
「松井さんは若い頃のアーロン・ジャッジなどを見ている」
巨人の宮崎キャンプに10日、松井秀喜臨時コーチ(ヤンキースGM付特別アドバイザー)が合流。多くの選手とやり取りがあった中で特に注目されたのは、背番号55の継承者、秋広優人内野手を約45分間にわたって直接指導したシーンだった。阿部慎之助監督も加わり、2人がかりで身振り手振りをまじえながら熱血アドバイス。その中身とは──。
全体練習が終わったサンマリンスタジアムのグラウンド上に、居残り特打のために姿を現した秋広に対し、松井氏と阿部監督が代わるがわるアドバイスを送った。基本的に2人の理論に食い違うところはなかったようで、阿部監督は「僕は彼に今までこう言ってきた、ということを共有した上で、松井さんに見ていただきました。いろいろな方法を教えていただきましたが、言っていることは僕とほぼ一緒かなと思いました」と説明した。
「松井さんは若い頃の(アーロン・)ジャッジ(外野手=ヤンキース)などを見ていて、そういう体験談も話してくれました」と付け加えた阿部監督。松井氏はヤンキースGM付特別アドバイザーとして、2022年にア・リーグ新記録のシーズン62本塁打を放ったジャッジをマイナー時代に指導したことがあるのだ。松井氏の話にはやはり、日本にいるだけではうかがい知れないスケールの内容が含まれている。
この松井氏、阿部監督、秋広の“3者会談”に立ち会った矢野謙次打撃コーチも、感激の面持ちだ。「松井さんと阿部監督がお話しされているのを聞いていると、共通点がものすごくいっぱいありました。おふたりが大事にしているポイントはほぼ一緒で、僕もまたそれを再認識し、これを選手に伝えていけば、いいきっかけになるだろうと自信になりました」と目を輝かせた。
たとえば、「秋広選手の場合は背が高い(身長200センチ)上、トップの位置も高いので、バットの軌道が“V字”になってしまう。そこで、おふたりが『水平に振ってみたらどう?』とアドバイス。最後は阿部監督が『テニスをやってみたらどうだ? 遊びでいいから。テニスのラケットは、V字ではまともにボールに当たらないから』と提案されました」と矢野コーチは説明する。
秋広が室内練習場へ移動しテニスラケットで打つ特訓を行った理由
実際、秋広はこの後、室内練習場の「木の花ドーム」へ移動し、テニスラケットで硬式のテニスボールを打つ特訓を行った。投球を“水平に線でとらえる”意識を養うことが目的だという。
松井氏は秋広に「あれだけのサイズの日本人選手はなかなかいない。なおかつパワーもある。見ているだけで夢があるし、それを実現できる可能性も十分あるので、応援していきたいと思います」と目を細め、阿部監督は「松井さんに『1人でやる練習が一番大事だと思うよ』と言っていただいたので、(秋広は)今日は寝ないと思いますよ」と笑った。
それにしても、松井氏と阿部監督は、巨人のユニホームを着て一緒にプレーしたのは2年間(2001、02年)に過ぎないが、実に息が合っている。阿部監督は松井氏の球場入りにあたって、一塁側ベンチ前から外野まで約50メートルのレッドカーペットを敷き、“ゴジラのテーマ”とともにその上を歩かせる演出を行った。これは松井氏が昨年10月、報道陣から臨時コーチの可能性を問われた際、「空港からホテルまでレッドカーペットを用意するなら。それが第一条件」とジョークで答えたことにちなむサプライズだった。
阿部監督は「空港からだと公道を走るので、さすがにちょっと厳しいかなと思いまして……短い距離でしたけれど、ちょっと罰ゲームみたいになってしまいましたね」とニヤリ。松井氏は「冗談で言ったのですが、唯一心配していたのが、彼だったら本当にやるのではないかとということ。心配していた通りでした」と“応戦”した。
阿部監督の周到な準備の甲斐あって、松井氏のキャンプ参加はチームに好ましい刺激を与えそうだ。14日まで、選手たちは存分に“ゴジラエキス”を吸収する。