王貞治、清原和博…「あとは大谷翔平」 元コーチ回顧、柳田悠岐も備えていた“資質”
2015年ドラフトで鷹は柳田悠岐を2位指名…秋山翔吾との2択だった
勝負強い打撃で西武の黄金期を支えた立花義家氏(韓国プロ野球サムスン・ライオンズ3軍打撃コーチ)は2017~2021年にソフトバンクの打撃コーチを務めるなど、ダイエー時代を含め計13年間ホークスで打撃を指導。2010年ドラフト2位で入団した柳田悠岐外野手は入団当初、「タイミングを取るのが上手くなかった」と明かした。
広島経済大から入団した柳田だったが、ソフトバンクは、八戸大の秋山翔吾外野手(広島)との“2択”だったという。1位で山下斐紹捕手(習志野高)を指名後、次の指名で柳田と秋山が候補に上がっていた。
「(スカウト会議の出席者が)どっちを獲るかで悩んでいたら、王会長が『ホームランを打てる打者にしよう』とおっしゃったことで、ギータを獲ったと聞きました」
2015年に球団初のトリプルスリーを達成するなど、今や球界を代表するスーパースターだが、プロの世界に飛び込んできた際は「タイミング取るのが上手くなかった。右足が落ち着かないでカチャカチャと動いていて」と立花氏は笑う。
弱点を解消するために、右足を上げてタイミングを取る“1本足打法”に取り組ませた。昨年まで監督を務めていた藤本博史2軍打撃コーチが特訓に付き合ったという。「遠くからトスをあげるティー打撃で“間”を取らせるようにした。ずっと1本足で長く立たせていました」。
豪快なアッパースイングは「振り上げるスイングが彼には良かった」
1年目は6試合の出場。ほとんどの時間をファームで過ごすと、徐々に打撃の形ができていった。「もともと振る力はあったから。手が体から離れずにバットが出てくる。体の近くを通って、手がグワッと伸びる。しっかり押し込めるから左投手のカーブを左中間に放り込んだりしてね」。すでに長距離砲の片鱗は見せていたという。
持ち味だった豪快なアッパースイングを矯正することはなかった。「ギータはバットをレベルに振ると右膝が割れちゃうから内野ゴロになりやすい。振り上げるスイングの方が彼には良かった。右足を上げて我慢して、そこから一気に振り上げる感じです」。3年目の2013年に104試合出場で打率.295、11本塁打を放つと才能は爆発した。
「絶対に将来の4番になると思っていた。振る力はあるし、スイングも速い。バットに当てるのもうまい。いずれはそう(トリプルスリー)なるかな、と。一瞬で出す力が大きい。とにかく可能性はすごかった。反対方向への打球もよく飛んだしね。2013年からすごい選手になりましたよね」
立花氏は柳田に「お前は俺の中で『この人のバッティングを見たいな』と思わせてくれる1人だよ」と伝えたことがあったという。同氏が過去にそう思ったのは王貞治、門田博光、清原和博、秋山幸二と偉大なレジェンドたち。そして「あとは大谷翔平だね」。
スケールの大きい柳田を見守ってきた立花氏は、球界の“宝”への期待の大きさをうかがわせた。
(湯浅大 / Dai Yuasa)