メジャーからの“呼び出し” まさかの人違いに困惑も…阿部翔太が見せた気遣い
オリックス・阿部翔太が遭った“人違い”は「SHOTA」の文字
苦労人は、気配りの人だ。オリックスの阿部翔太投手が、世界中に発信された“人違い”に「間違われた相手に申し訳ない」と気遣いをみせた。「カブスのファンやメジャーを愛する人たちが、一瞬でも僕を『今永昇太』だと思ったんですよね。今永くんに申し訳ないですよ……」。阿部が、トレードマークのえくぼを浮かべて当時を振り返った。
いきさつはこうだ。今年1月12日、DeNAからポスティングシステムを利用して、MLBのカブス入りが決まった今永昇太投手をカブスの球団公式インスタグラムが歓迎する際、今永の投球写真に“なぜか”阿部のタグをつけてメンションしてしまった。
「SHOTA」違いに気付いた日本のファンから「メンション先は今永選手ではありません」「阿部翔太選手、もしかして狙われている?」などの投稿もあって、すぐさま訂正されたが、一時は阿部のSNSに英語のメッセージが殺到する事態になった。
「すごい(数)アメリカの方から英語でDMがめっちゃ来てましたから、ビックリして、すぐに『違うよ』と(SNSに)アップしました」
阿部は本拠地・京セラドームの地元、大阪市大正区で育ち、酒田南高、成美大(現福知山公立大)、日本生命を経て2020年にドラフト6位でオリックスに入団した。エリート街道を進んできたと思われがちだが、故障もあり順風満帆の野球人生ではなかった。
大学時代はスーパーのレジ打ちや真冬の高速道路のインターチェンジでタイヤの雪対策をチェックするアルバイトなどに明け暮れ「1度も自分をエリートだと思ったことはありません」と言い切る。間違われて怒るどころか「今永くんに申し訳ない」と言えるのは、苦労人と称される阿部らしい。
阿部の本音は「マジで……ここで投げるのに必死です」
昨季もこんなことがあった。調子を落として2軍での再調整を命じられた際、グラウンドにいた報道陣に歩み寄り「ファームで投げてきます。すぐに帰ってきます」と自ら降格を告げた。確かに、数日前から調子を崩している理由を聞きたかったのだが、遠慮して聞けずにいた。
「みなさん、気を遣って見守っていただいているのがわかっていましたから、自分から説明しなくてはと思いました」と阿部。こんなところにもファンだけでなく、メディアからも愛される理由がある。
突然飛んできた、メジャーの話。挑戦する気持ちがあるのかと尋ねると「メジャーですか? 全然ないです。マジで……ここで投げるのに必死です」と言葉が返って来た。山本由伸投手、山崎福也投手がチームを去っても、先発、中継ぎ、抑えと球界屈指の投手陣を擁するだけに、実績のある阿部でさえ気を抜くことはできない。
○北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。
(北野正樹 / Masaki Kitano)