4か月経っても「本当にショック」 まさかの“メンバー漏れ”…山足達也が誓う逆襲
オリックス・山足が忘れない、日本シリーズでの悔しい“メンバー外”
悔しさが、厳しい練習の疲れを忘れさせる。オリックスの山足達也内野手は、昨年の日本シリーズの出場登録メンバーから漏れたことを厳粛に受け止め、課題とされる打撃を磨いている。「本当にショックでした……」。4か月が経った今でも表情を曇らせる。
昨年10月26日にNPBから公示された「SMBC日本シリーズ2023」出場資格者名簿に山足の名前はなかった。出場資格者40選手のうち、26選手が各試合のベンチに入れる。チームが登録した内野手は11人。球団から「帯同してチームを支えてほしい」と伝えられたが、断った。
内野の全ポジションはもちろん、外野も守れるユーティリティープレーヤー。その経験を、大舞台に立つ若い選手らに伝えるのも大事な仕事だと理解していたが、チームメートが短期決戦を戦っている時こそ自分を磨かなければいけないと思い、2軍の球団施設、舞洲で若手と一緒に汗を流した。
山足は大阪桐蔭、立命館大、Honda鈴鹿を経て2017年ドラフト8位でオリックスに入団。1軍戦力としてベンチ入りし、活躍する日々だが「ここ数年、何が足りないのかを自己分析したら、やはりバッティングでした。30歳になっても足(の速さ)は衰えたと思わないですし、他の選手とタイムでも負けていません。守備に関してはそれなりにどこでもやっています」というように、堅実な守備は折り紙付きだ。
今オフにドジャースに移籍した山本由伸投手が2年連続してノーヒット・ノーランを達成した際、守備固めで一塁守備に就き、快挙の“完成”に導いていた。1度目(2022年6月18日・西武戦)は一ゴロを捕球しベースカバーの山本にトスして試合を成立させ、2度目(昨年9月9日・ロッテ戦)は二ゴロを処理した宜保翔内野手の送球を受けて2年連続の快記録を達成させた。
今オフは連日、舞洲の球団施設に通った。夜が明けぬうちに大阪・枚方市の自宅を出発し、午前7時には体をほぐして施設外をランニング。地球環境高校(長野)を2012年の選抜大会に導いた時のエースで球団アシスタントスタッフの漆戸駿さんに緩いボールを投げてもらい1球1球、打席の前に据えてあるテレビモニターでフォームをチェックした。
「打った形はどうか、こういう打ち方をしたらどんな打球になるのかを確かめています。下手は練習するしかありません」と山足。1番お手本にしているのが、安達了一内野手兼任コーチで「チームの雰囲気が悪くても、みなさんには『安達さんなら何とかしてくれる』という期待感がありますよね。右打ちはもちろん、四球が欲しいという時に出塁し、どんな形でも1点が欲しいという時に得点圏に走者を進めるし、走者をかえす。自分に足りない長打力、対応力を常に研究しながらやっています」と技術向上に貪欲だ。
プロ7年目の30歳、いぶし銀のプレーで存在感
「うちには良い打者が多いので、積極的に聞きに行きます。歳下の選手でも『今はどんな感じで打ったの?』と。打者の意見が最も良い教科書だと思っています。(中川)圭太の意見も聞いて、いろいろ試行錯誤してやっています」
一塁守備の際には、試合中にヒットを放った相手チームの打者にも聞き、そうした声をメモしてオフの練習に取り入れる。目指すのはホームランバッターではなく、状況に応じた臨機応変な打撃だ。
「うちの選手はすごい選手ばかり。能力だけを見たら、もうかなわない選手たちなので、そこばかり目指して自分の役割がなくなってしまったら、この世界は終わりじゃないですか。スーパースターは目指しますが、自分の立場を考えながらやっていきます」
初めて主力クラスが出場した今年2月18日の紅白戦で、山足は4回1死一、三塁で同点の右犠飛を放った。「ホームランを狙っていたのですが、残念でした」と冗談を飛ばしながらも「あの場面で得点できたことは、チームにとってもよかったと思います」と、与えられた役割を果たした充実感が漂った。プロ7年目の2024年も、いぶし銀のプレーで存在感を示す。
◯北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。
(北野正樹 / Masaki Kitano)