田嶋大樹が切り開いた新境地 同僚との関係に変化…“飾っていた”自分との決別

オリックス・田嶋大樹【写真:小林靖】
オリックス・田嶋大樹【写真:小林靖】

オリックス・田嶋が成長を実感「飾らず気負わずできた」

 新境地で迎えるプロ7年目だ。オリックス・田嶋大樹投手は、淡々とした口調で“確かな手応え”を感じていた。「これまでで1番飾っていないというか……。『飾らず気負わず』できたんじゃないかなという感じです」。過去6年間のキャンプでは、心のどこかに「飾る自分」がいたという。

「綺麗に見せる、綺麗に見せなきゃ……という思いがあったんです。ピッチングでも抑えなきゃ、とかいろんな思いがあったのですが、年齢とともに経験も積んで考え方が変わってきたような感じですね」

 今年の春季キャンプは「8割の心」で臨んだ。昨季は左前腕部の張りや新型コロナウイルスに感染したため、長く戦列を離れてしまった。成績は13試合で6勝4敗、防御率3.09。先発ローテーションを守るようになったプロ3年目の2020年以降、初めて先発登板数が20試合を切った。

 ただ、自分を見つめ直す時間が増えたことで考え方も変わった。直近3年は「量をこなして」自分を追い込んだが「やり過ぎないというか、常に8割くらいを意識するようにしました」と練習量を意識的に抑えた。8割の心が、自然体にもつながった。「そうだと思いますね。多分、ちょっと大人になれてきたんじゃないでしょうか。経験を重ね、刺々しいところが段々と削られてきたんじゃないでしょうか」と明かす。

同僚たちと深めた“絆”に「一歩成長したのかな」

 今春のキャンプで嬉しかったことがある。同僚とのコミュニケーションが深まったことだ。「今までは結果を出さなくてはいけないという感じで、練習中もほとんど話すことはなく近寄りがたい雰囲気を作っていましたが、それが抜けたのか、声を掛けてもらえることが多くなってきました。(年齢が)下の選手からが多いですが、いろんな選手とコミュニケーションが取れたことが1番嬉しいというか、一歩成長したのかなというところですね」と明るい表情で声を弾ませた。

 さらに、これまではあまり関心を持たなかった守備について、西野真弘内野手や小谷野栄一打撃コーチに聞くこともできた。「今までは投げることにしか興味がなかったのですが、普通にうまくなりたいな、と思って。守備はやっぱり内野手に聞いた方が早いので、基礎の基礎を教えてもらいました」。

 JR東日本の先輩でもある西野は「ピッチャーから守備のことを聞かれたのは初めてで、ビックリしました。彼なりの向上心と、元々、コミュニケーションを取っていきたいという気持ちがあるんでしょうね」と驚きながらも、変化を温かく見守る。

 田嶋にとって、ファンと触れ合う時間が増えたことも嬉しいことだった。コロナ禍が明け、スタジアムに足を運んでくれるファンが増えた。取材が終えるのを見守っていたファンに自ら歩み寄り、練習までの時間を使ってサインに応じたこともあった。「スタバカードや入浴剤など、例年より多くいただきました」。手紙には全部、目を通す。

「僕に手紙を書いてくださるファンの方は、僕に結果を求めないんですよ。1年間怪我なくという前提で、僕の世界観を崩さずに書いてくださる。それがすごくありがたいですね」。自分を理解してくれるファンと一緒に、結果を求めることなく自然体でシーズンを待つ。

◯北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。

(北野正樹 / Masaki Kitano)

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