現れた“座禅効果”、健大高崎が手にした不動心 苦しい展開も…我慢が導いた勝利

健大高崎は1回戦で学法石川に4-0で勝利した
健大高崎は1回戦で学法石川に4-0で勝利した

5回まで0-0も6回に1点、7回に3点奪い学法石川に快勝

 座禅が“我慢の勝利”をもたらした。第96回選抜高校野球大会は19日、健大高崎(群馬)が1回戦で学法石川(福島)と対戦。前半は0-0の息詰まる投手戦だったが、後半に突き放し4-0で勝利をものにした。

 5回までは学法石川先発の左腕・佐藤翼投手(2年)に3安打1四球に抑えられ、1点も取れなかった。試合前に「5点くらい取って試合を進めたい。接戦はなるべく避けたい」とゲームプランを描いていた青柳博文監督にとっては予期せぬ展開だった。

 それでも6回の攻撃では、先頭の2番・田中陽翔内野手(3年)が敵失で出塁。続く高山裕次郎内野手(3年)が放った高いバウンドの打球も、相手の一塁手のミットをはじき(内野安打)、無死一、二塁とした。ここで4番の主将・箱山遥人捕手(3年)にあえて命じた送りバントは、二塁走者が三塁で封殺され失敗したが、相手投手の佐藤翼は次打者の初球を暴投。労せずしてチャンスが1死二、三塁に膨らんだ。佐藤翼は2死後にも、この回2つめの暴投。意外な形で健大高崎に先制の1点が転がり込んだ。

 これで呪縛から解き放たれた。続く7回、1死二塁の好機に9番・佐々木貫汰外野手(3年)が左前適時打を放ち、次打者の初球には二盗成功。機動力野球は健大高崎の伝統的な戦法で、青柳監督は「“自由スチール”のサインを出していました。“行けたら行け”という意味です」と明かす。この後、田中、箱山も適時打を放ち、1イニング3得点で試合の流れを引き寄せた。

 守っては、先発の佐藤龍月投手(3年)が7イニングを2安打無失点。石垣元気投手(2年)が残りの2イニングを3安打無失点で締め、完封リレーを決めた。

今月から取り入れる座禅…愛知・至学館を指導している僧侶から手ほどき

 前半のもどかしい展開の中でも、ナインに焦りは感じられなかった。というのも、今月に入ってから毎朝、座禅に取り組んでおり、この日は甲子園の室内練習場で練習開始前にも約3分間行った。

 主将の箱山は初戦で兵庫・報徳学園に完敗した昨年の選抜と比べて「甲子園という特別な舞台でも、去年よりは心を動かされず、試合に入れています。座禅で落ち着く時間を取れている効果かなと思います」と証言した。

 今月3日に行われた練習試合の際、愛知・至学館に座禅を指導をしている僧侶から手ほどきを受け、その後自分たちで毎朝継続している。

 至学館に座禅を導入したのは、昨夏限りで退任した麻王義之前監督だった。2011年の夏に創部6年目で“戦国愛知”を勝ち抜き、初の甲子園出場を遂げた裏にも、座禅があった。名門・愛工大名電との決勝戦は、雨で1時間30分もの中断に見舞われたが、ナインは座禅を組んで集中力が削がれるのを防いだという。

 青柳監督は「われわれは、きちんと足を組むわけではなく、あぐらをかいてやっています。いわば“スポーツ座禅”です」とおどけつつ、「私も選手たちと一緒に座禅をやっていて、落ち着いて指揮を執れていると思います」と効果を実感している。

 24日の2回戦では明豊(大分)と対戦する健大高崎。“座禅効果”で快進撃といくかどうか。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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