仲間から「調子乗ってるな」も成長実感 「嫌われてもいい」入山海斗が目指す“舞台”

オリックス・入山海斗【写真:北野正樹】
オリックス・入山海斗【写真:北野正樹】

ルーキーイヤーの昨季は2軍で44試合に登板し13セーブを挙げた入山海斗投手

 自覚が芽生え、顔つきも変わった。オリックスの育成2年目・入山海斗投手が闘争心を前面に出し、支配下登録を目指している。「自分としては、今年が最後だと思って遠慮をしないでやっています」。いつもは笑顔で答えてくれる右腕が、真剣な表情で自ら今シーズンに臨む思いを語ったのは、今年の春季キャンプ中盤だった。

 大阪府守口市出身。日高高校中津分校(和歌山)進学後、外野手から投手に転向し、リリーフの切り札として県大会準優勝に貢献した。東北福祉大では150キロ前後のストレートを武器に1年秋に公式戦に登板したが、制球に苦しみ4年間で公式戦登板はその1試合に終わった。

 入団後は、東北福祉大の先輩でもある岸田護投手コーチのアドバイスや、中垣征一郎巡回ヘッドコーチの指導で正しい体重移動を身に付けたことで球速が上がり、制球力も付いた。1年目はキャンプや練習試合で力強いストレートをアピールし、3月8日の教育リーグ広島戦(杉本商事BS舞洲)で、自己最速タイの154キロをマーク。ウエスタン・リーグでは自身、2戦目となった3月24日の広島戦(由宇)から最終イニングを託されるようになり、44試合に登板し5勝3敗、13セーブ、防御率2.36でシーズンを終えた。

 1年での支配下登録は勝ち取れなかった。なぜか。自問自答する日々が続いた。プロなのだから周囲に遠慮することなく、自分をアピールする姿勢が足りなかったのではないか。そう気づいたのは、契約更改を迎える頃だった。

「育成は1、2年目が勝負じゃないですか。技術的には少し成長したと思いますが、自分はちょっとおとなしいというか、あんまり(前に出て)いけない方なんです。遠慮というか、控えめというか、なんかちょっとオドオドしていたんです。そういうところをなくして、もっと自分を出していけばいいのでは、と思いました。何がアカンかったのかと思った時、やはりそういうところが足りなかった」

周囲を見渡し気づいたこと「遠慮して控えめにしているのは自分くらい」

 アマチュア時代と違い、プロ野球の世界は支配下登録の枠も限りがある。ライバルを“蹴落とす”覚悟も必要。マウンドでは誰も助けてくれない。個々の力を発揮し、結果を残すことが求められる。それは入山自身も分かっているつもりだ。

「他の選手を見ていても、遠慮して控えめにしているのは自分くらい。やっぱりそういう世界じゃないと思ったんで、気持ちは変わりました。遠慮しないというか、今年はとにかく頑張って、嫌われてもいいや、くらいの気持ちで臨んでいます。なんていうのかな、負けたくない、というその気持ちですね。仲間ですが、ライバルだと思ってやった方が、身体の動きとかも変わって来るんじゃないかなと思っています」と打ち明ける。

 育成選手出身で、セットアッパーやクローザーを任されていた宇田川優希投手がコンディション不良のため開幕1軍は難しい状況。一方で、同じ育成の才木海翔投手が豪州でのウインター・リーグで、クローザーとして10イニングで15奪三振、防御率0.00と急成長している。

「最近は、イジリかもしれないですけど、『調子に乗ってるな(笑)』とよく言われるようになりました」と入山。内面を包み隠さずオープンすることができるようになったことで、表情は明るくなり自信に満ちた顔つきになった。「自分自身、今年がラストだと思ってやっていますし、やります」。言葉にも力強さが宿った。

◯北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者一期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ(北野正樹/Masaki Kitano)

(北野正樹 / Masaki Kitano)

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