10本揃えた木製バット「何本折ってもいい」 15万円の負担も…背中押す親の愛情

中央学院戦で適時二塁打を放った青森山田・吉川勇大【写真提供:産経新聞社】
中央学院戦で適時二塁打を放った青森山田・吉川勇大【写真提供:産経新聞社】

折れる木製バットは金銭面が課題…使った選手の親の本音は

 出費がかさむ木製バットの使用を、保護者はどう思っているのか。青森山田の吉川勇大内野手(3年)は、低反発の金属バットが導入された第96回選抜高校野球大会で木製を使用。大会に向け、自己負担で12本持参した。2回戦ではバットが2度折れる場面もあったが、父・永利(ながとし)さんは「何本折ってもいい。応援してあげたい気持ちが強い」と、これからも息子をサポートするという。

「振り抜ける感じがして、自分には合っている」。今大会、「5番・遊撃」で3試合に出場した吉川は、21日の1回戦・京都国際戦で2安打をマーク。準々決勝では中央学院(千葉)に敗れたが、3安打を放ち、大会打率は.417と堂々の結果を残した。

 しかし、金属バットと違って木製バットは“折れる”。それもあって、高校野球では金属バットが導入された歴史がある。1本1万5000円ほどで、青森山田の2人は自己負担で、ともに10本ほどのバットを準備して試合に備えた。

 吉川は2回戦の広陵(広島)との試合で、バットを2本折られた。好投手の高尾響投手(3年)と対戦し、7回には詰まって三ゴロ、8回には外角の直球が先端に当たり、根元から折れた。

 大手メーカーの新基準バットを購入しようとすると1本3万円~3万5000円ほどかかるが、木製が折れることを考えれば圧倒的に安く済む。木製を使えば出費がかさんでしまうが、永利さんは「本人が使いたいと思うならそれでいい」と背中を押す。

 木製バットを10本揃えようと思えば、計15万円以上のコストがかかってしまう。それでも、かけがえのない息子の青春。「応援する気持ちが強くて、お金よりも、一生懸命プレーしてもらうことの方が大事ですから」と語る。吉川も大会中、「親に結果で恩返ししたい」と感謝を口にしていた。

 準々決勝では、初回に三遊間を抜ける痛烈な適時打。9回には高めの変化球を捉え、左中間への二塁打を放った。夏に向けては「これからも木でいきたい」と話す。同じく木製を使った対馬陸翔外野手(3年)も、今大会は打率.357を記録。2人が鮮烈なインパクトを残し、全国の球児に木製バットの可能性を示した。金銭面は解決しづらい課題だが、今後は木製を目にする機会が増えるかもしれない。

(上野明洸 / Akihiro Ueno)

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