山本由伸へ「自由に暴れ回って」 メジャー経験の40歳、平野佳寿が贈る“らしい言葉”
オリ平野佳寿はメジャー移籍の山本由伸を「だいぶ期待しています」
経験してきたからこそ、わかることがある。オリックスの守護神・平野佳寿投手は、今季からドジャースでプレーする山本由伸投手の活躍を確信している。「ずっと楽しそうに野球をやっているので、それをアメリカでも同じように続けてくれたらいいと思います。だいぶ期待していますよ」。自身もメジャーの舞台で3年間プレー。3シーズンで150試合に登板し、昨季に日米通算250セーブを達成した右腕は、静かな口調で山本にエールを送った。
技術的な裏付けではなく、野球に対する取り組みを「成功の要因」として挙げたのは、メジャーからオリックスに復帰してからの3年間で、ともに過ごした山本の性格を知り尽くしているからだ。
NPB史上初となる3年連続での沢村賞を獲得など“日本のエース”として君臨した山本は、独自の練習方法を貫き、投球フォームを固める「ブレない心の強さ」を持つ。一方で、誰に対しても腰は低く、常に謙虚さを持ち続けた。
野手の拙守でピンチを迎えても「野球にエラーはつきもの。打者を抑えられればいい」と顔色を変えることはなかった。オリックス時代には2度のノーヒットノーランを達成。2試合ともに守備固めで出場、一塁手として2度とも最後のプレーに関わった山足達也内野手が「自分の記録ならエラーをしても構わないが、人の記録なのでエラーはできないから緊張しました」と振り返った。
その言葉を知った山本は「エラーで完全試合を逃しても怒りませんよ」と笑い飛ばしたのだった。平野佳の「選手を見る目」は確かだ。2022年オフにレッドソックス入りした吉田正尚外野手についても、メジャーの舞台での活躍を断言していた。
2022年オフの取材で、吉田が日本シリーズ第5戦(京セラドーム)で劇的サヨナラ2ランを放った直後にもあまり興奮しなかったことを挙げ「彼は常に冷静。あまり喜怒哀楽を出さない性格は、向こうでの生活に慣れることにもつながると思います」と語っていた。
環境が大きく変わっても自分を見失わない精神力や順応力がメジャーでの成功につながるのは、自身の経験から理解している。「由伸も一喜一憂しませんからね。僕とは次元が違いますし、心配することはありません。『自由の国』と呼ばれるアメリカですから、彼のやり方を存分に発揮して、自由に暴れ回ってほしいですね」。デビュー戦こそ結果が残せなかったものの、8日に40歳を迎えたレジェンドは、山本の飛躍を心から願っている。
○北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。
(北野正樹 / Masaki Kitano)