突然の1軍昇格に「何のことか…」 荷物出しまで30分、堀柊那のドタバタ1軍初体験
ドラフト4位ルーキー・堀柊那がオープン戦で“プロ初安打”をマーク
ドキドキ、ワクワクの“初体験”だった。オリックスのドラフト4位ルーキー・堀柊那捕手は、開幕前のオープン戦で1軍昇格を果たし“プロ初安打”を放った。わずか3日間の帯同にも「凄い楽しかった。観客も多くて、(高校時代に出場した)甲子園に近い雰囲気。また、ここに戻ってきたいと思いました」と、目を輝かせていた。
突然の昇格に驚きを隠せなかった。堀は3月13日の教育リーグ・広島戦(杉本商事BS)後に、いつものように室内で、高校の先輩でもある山崎勝己バッテリーコーチと居残り練習を行っていた。練習も終盤に差し掛かった頃に山崎コーチから「今から荷物出しの準備をしなさい。明日から千葉な」と伝えられた。
2軍は翌日から静岡遠征が控えており、千葉と言われてもピンとこない。1軍は遠征中で15日からロッテ2連戦――。考えれば考えるほど頭はパニックになっていた。ルーキーの慌てふためく姿に山崎コーチは苦笑いを浮かべながらも「宿舎に着いたら監督、コーチ、先輩に必ず挨拶をしなさい。新人らしく、はつらつとした姿を見せてこい」と送り出した。
オープン戦ながらチームの高卒組では1軍一番乗り。「最初は何のことか分からなかったです。荷出しのトラックが30分後に出るからと言われて。急いで準備しました。何をもっていけばいいかバタバタでした(笑)」。春季キャンプ以外では初の遠征に不安を抱えながらも、頭の片隅には“爪痕”を残すことを考えていた。
初安打も1軍投手のレベルを痛感「真っすぐも変化球もとにかく速い」
出番はいきなりやってきた。15日・ロッテ戦(ZOZOマリン)の8回。代打で登場すると国吉の初球を迷わず振り抜き中前打を放つと、17日のヤクルト戦にも9回に代打で出場し二飛。わずか3試合の帯同だったが、2打席に立ち嬉しい初ヒットを記録した。
「真っすぐも変化球もとにかく速い。コントロールもいいし、無駄があったら差し込まれる。真っすぐだけを張って、1、2、3で打ちました。レベルの高さを痛感しましたが、ずっとここにいたい。今度は主役で試合に出たいと思いました」
ベンチでは目標にする森友哉捕手の、一挙手一投足を見逃すまいと常に観察していた。打撃はもちろん、投手への声掛け、スローイングや配球。一流のプレーを間近で感じることで実力差を痛感した。「健矢さん(若月)はいなかったのですが、勉強になることばかり。力感なくボールを投げているのに凄い伸び。肩が強いだけじゃダメ。自分に必要な部分でした」。2軍に戻ると先輩から得た全てを頭に叩き込んだ。
走攻守、全てにおいて1軍レベルにはほど遠い。やることは山ほどあるという。だが、山崎コーチは“1軍体験”を終えた新人捕手の成長に期待を込める。「1軍を経験しないまま去っていく選手も多い。たとえオープン戦でもね。その緊張感を味わえたのは良かったんじゃないかな。高卒なので分からないことばかり。まずは一社会人としてちゃんとやりなさい。でも、彼は思ったよりやりますよ」。近い将来、球界を代表する捕手になるため――。堀の挑戦は始まったばかりだ。
◯著者プロフィール
橋本健吾(はしもと・けんご)
1984年6月、兵庫県生まれ。報徳学園時代は「2番・左翼」として2002年選抜大会優勝を経験。立命大では準硬式野球部に入り主将、4年時には日本代表に選出される。製薬会社を経て報知新聞社に入社しアマ野球、オリックス、阪神を担当。2018年からFull-Countに所属。
(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)