今永昇太の脳裏に焼き付く“8年前の光景” 屈辱の敗戦…メジャーでも忘れない「原点」
今永はNPBデビュー戦で3本塁打を浴びて敗戦投手にとなった
2016年3月29日、DeNA・今永昇太投手は試合終了後も雨の降る横浜スタジアムのベンチに残り、スタンドを見つめていた。
「9回にファンの皆さんが総立ちで応援していて、その姿をベンチから見ていて、そこに勝利を届けられなかったことが申し訳なくて……」
2015年ドラフトで駒大から1位入団を果たしたルーキーの今永は、本拠地開幕戦の巨人戦でプロ野球選手としてのデビューを果たした。緊張の初マウンドは3本塁打を浴びるなど、7回5安打4失点(自責3)で黒星を喫した。
本塁打が出やすいとされる横浜スタジアムで、相手の一発攻勢に沈んだ。チームは6点を追う9回に2点を返すが、劣勢をひっくり返すことはできなかった。
「寒いなか、夜9時を過ぎても一生懸命に応援してくださっていて……。勝って恩返しがしたいです」
22歳の左腕はファンから放たれる熱、込められた想いを体感した。共に戦っている存在なのだと痛感した。記者は、今永と当時を振り返ったことがある。
「プロ野球選手としての自分の原点みたいなもの」
「あの時にスタンドを見ていたことも、その光景も覚えています。本当にファンあってのプロ野球なので。プロ野球選手としての自分の原点みたいなものですかね」
巨人戦でのホロ苦デビュー後も、好投は続くが5戦4敗で1か月以上、白星なし。5月6日の6戦目でようやく初勝利を手にすることができた。「勝つことがこんなに大変だとは思いませんでした」。そこから約8年――。
2024年4月1日(日本時間2日)、カブス・今永昇太はシカゴで熱狂の渦の“ど真ん中”にいた。
リグレー・フィールドでの本拠地開幕戦で、ロッキーズ打線を6回2安打無失点で制圧。9三振を奪う快投でメジャーのデビュー戦勝利を飾り、大歓声を浴びていた。
「リグレーのファンの方が最後、ミットまで歓声でボールを押し込んでくれたのかな」
新天地の本拠地のスタンドは、今永にどのように映っていたのだろうか。
(湯浅大 / Dai Yuasa)