「負けるのは簡単」低迷期→黄金世代へ 40歳“生きる教科書”平野佳寿からの金言
オリックス・平野佳寿「何セーブしたい……とは思わないですね」
弱かった時代を知るからこそ、強くあり続けることの大切さを説く。オリックスの守護神・平野佳寿投手は「強いチームで居続けなければならない」と個人記録よりチームのリーグ4連覇と日本一奪還を至上命題とする。
MLBからオリックスに復帰して4年が経った。「優勝させたい」と臨んだ2021年、25年ぶりのリーグ優勝に貢献。昨季は5月に史上初の日米通算200セーブ、200ホールドと10月には史上4人目となる日米通算250セーブを記録した。
今季は「何セーブしたい……とは思わないですね。もう1度、日本一になってあの喜びをみんなで味わいたいですね」。個人成績よりチーム成績を優先させるのは、常勝軍団として地歩を固めるために大切な年になるという思いからだ。
「負けるのは簡単。連敗するのも簡単なんです。勝つことの難しさをみんなで分かるためにも、やっぱり勝ち続けないといけないんです」
苦い経験がある。鳥羽高(京都)から京産大を経て2005年の大学生・社会人ドラフト希望枠で入団。プロ1年目は5位、2年目は6位だった。3年目に2位になったものの、以降5年連続してBクラス。2014年には最終戦で優勝を逃すところまで奮闘したが、その後は再びBクラスに転落した。
「やっぱり、強いチームで居続けなきゃいけないと思います」
2018年にメジャー挑戦するまでの在籍12年間のうち、低迷期は10年にも及んだ。「1回負けて、また弱い時代に戻ってしまうのは、これからの子たちのためにもよくありません。負けていた時と今では、全然、雰囲気が違います。勝っているチームでやっていると若い子たちのやる気は全然違うと思うんで。やっぱり、強いチームで居続けなきゃいけないと思います」。勝ちたくても勝てなかった時代を過ごしたからこそ、負ける怖さと勝つ喜びを若い選手たちも共有してほしいという思いが強い。
今春のキャンプでは8度ブルペンに入り、本拠地でのオープン戦開幕試合を実戦登板に選んだ。「それだけ多くブルペンに入れたというのは、僕にとって良いことなんです。しっかりと投げて体を作るという意味で、良いキャンプを過ごせたと思います」。
3月には40歳を迎えた。「僕は(球速)160キロを出すのは無理なので、颯一郎(山崎)や宇田川(優希)の真似はできません。そういう意味で、若い投手からは刺激は受けません」と言いながらも、抑え候補に台頭してきた育成2年目の才木海翔投手には「走者を出しても、0点に抑えてベンチに戻ってきたらいいんだ」と、クローザーとしての心構えを伝授するなどアドバイスは惜しまない。
「40歳なら40歳の体でしっかりと投げます。1軍の試合で投げるというのが、野球人にとっては1番。目の前の試合、1試合1試合を大事にしていきたいというのは、昔と一緒ですね」。プロ19年目もチームのために腕を振る。
○北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。
(北野正樹 / Masaki Kitano)