「開幕スタメンが全てではない」西野真弘の矜持…今夏34歳が目指す「脇役的な存在」
オリックス・西野真弘「自分の役割を果たせば、チームが良い流れになる」
一喜一憂をしている暇はない。昨季に続き、2年連続で開幕スタメンを勝ち取ったオリックス・西野真弘内野手は「自分の役割を果たせば、チームが良い流れになる」との思いで打席に立つ。
プロ10年目の今季、2年連続で開幕戦のスタメンに名を連ねた。「2番・二塁」で出場した3月29日のソフトバンク戦(京セラドーム)では初回の今季初打席で右安打を放ち、宗佑磨内野手の適時二塁打で同点の本塁を踏んだ。2カード目の西武3連戦は計5打数2安打。4月4日の3戦目は6回無死から左翼線二塁打を放ち、森友哉捕手の適時打で生還。これが決勝点となり、チームの連敗を3で食い止めることに貢献した。
西野は東海大浦安高から国際武道大、JR東日本を経て、2014年にドラフト7位でオリックスに入団。俊足巧打に加え、勝負強さも魅力のプレーヤーである。2020年8月の西武戦では、9回無死から代打で出場し、高橋光成投手のノーヒット・ノーランを阻止するヒットを放った。日本シリーズでも2022年は通算11打数5安打で26年ぶりの日本一に貢献し、昨年の第2戦でも先制の適時三塁打を放ったことも記憶に新しい。
今季の西野は、巧打だけが持ち味ではない。4月2日の西武戦では四球、二塁打、四球、四球と全打席で出塁。勝利には繋がらなかったが、相手投手に27球を投じさせた。「後ろに良い打者がいるということを考えたら、ヒットだけじゃないという思いはありますね。塁に出たら流れが変わるんで、それも自分の役割かなと思っているんで」。開幕戦(3月29日・ソフトバンク戦)の第2打席でも12球粘った西野は、フォア・ザ・チームに徹する狙いを語る。
開幕スタメンはプロ2年目の2016年、プロ3年目の2017年にも起用された。しかし、その後は怪我に泣かされてきた。それだけに30歳を超えてからシーズンのスタートを幸先良い形で切ることができたのは、不断の努力があったからだろう。
プロ10年目、今夏34歳は「印象も必要ですが数字も残したいですね」
思うような結果を残せず、前半戦に2軍暮らしが目立った2022年7月末。真夏の地方球場で自身の打撃練習を邪魔しないように気遣う後輩に対し、大粒の汗を流しながら「遠慮しなくていいよ」と声を掛ける姿があった。九州の遠征先で迎えた2日後の誕生日(8月2日)も黙々とバットを振り続け、数日後に1軍昇格。優勝争いの直接対決となった9月19日のソフトバンク戦では「6番・指名打者」で先発出場し3安打の活躍を見せた。
昨年はオープン戦で打率.500を残し、6年ぶりの開幕スタメン出場を果たしたが、最終的には43試合の出場にとどまり、打率.197に甘んじた。数字で表れない部分で貢献したという自負はあるが「数字はずっと残りますし(首脳陣の起用も)そこを見て判断されますから、印象も必要ですが数字も残したいですね」と、結果も貪欲に求める。
「僕は本塁打ではなく、脇役的な存在としてチームに貢献しなくてはいけないと思っています。自分の役割は変わらないし、そういうところを球団も求めていると思うので、そこはブレずにやっていきたい」と、ベテランらしくしっかりと足元を見つめる。
ここ2年間は、大きな怪我をすることなくプレーができた。「昨年、痛感したのは、開幕スタメンが全てではないということです。良い選手がたくさんいますから、開幕戦に出られたとか、今、試合に出ているからではなく、年間を通して考えたら、まだ始まったばかり。やっとスタートラインに立てたというだけなので。全く気が抜けないし、必死なんです」。今夏34歳、充実した心技体で、シーズンを乗り切る。
○北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。
(北野正樹 / Masaki Kitano)