逸材・齋藤響介が流した涙 中嶋監督、先輩左腕の言葉も記憶なし「思い出せません」
オリックス・高卒2年目の齋藤響介、OP戦での涙も「よく覚えていません」
呆然とするしかなかった。オリックス・齋藤響介投手は、3月17日のヤクルト戦(神宮)に2番手で登板し、1回1/3を4失点でKOされ、涙が止まらなかった。その後のことをほとんど覚えておらず「いろいろあったので、それどころではありませんでした。キャンプからあまり調子がよくなかったので、なんかいろいろ溜まっていたみたいで……」。涙腺が崩壊した。
オープン戦初登板は、先発の田嶋大樹投手を継いで2番手で6回から登板。先頭の西川遥輝外野手に中安打を許し、1死後、村上宗隆内野手に右中間へ2ランを浴びた。7回には1死から四球の後、西川に右越え2ランを許して降板。1回1/3を47球で3安打4失点。ボールが浮いて3四球と制球にも苦しんだ。
満を持して登ったマウンドだった。それまで登板した教育リーグ2試合では計7イニングを5安打7失点。「前の試合で結果は良くなかったのですが、真っすぐも強く投げることができていました。今年初めてのオープン戦だったので、抑えるつもりでした」。結果を残して首脳陣にアピールするはずが、ボールを操ることもできずイニング途中で交代を告げられた。
こぼれる涙をアンダーシャツの左袖で拭って、必死に耐えた。田嶋がそっと寄り添ってくれたが「どんな言葉をかけてもらったのか、よく覚えていません」というほどのショックだった。中嶋聡監督からも声を掛けてもらった。「技術的なことではなく『(2軍で)頑張ってきて』というような話でした。試合が終わってからなのか、(途中の)ベンチ裏だったのか思い出せません。慰めてもらったのか、励ましてもらったのかも、よく分かりません。でも、話しかけてもらったことがうれしかったです」と振り返る。
昨季、プロ1年目でプロ初登板初先発となった2023年9月26日の西武戦(京セラドーム)で、4回2安打無失点の投球を披露し、勝敗はつかなかったものの上々のデビューを飾った。「響ちゃん」と呼ばれる笑顔の可愛い19歳だが、マウンドに上がると打者をにらみつけ、150キロのあるストレートやスライダー、フォークを投げ込むギャップも魅力の右腕。ドジャースに移籍した山本由伸投手が「ネクストブレーク選手」として挙げた逸材だ。
今季は開幕1軍入りを逃したが、ウエスタン・リーグでは三振も奪えるようになり、安定感も生まれてきた。「いろいろ変なことは考えず、コースを狙うというより、真ん中でも良いくらいの気持ちで投げています。ボールが先行したり、追い込んでからのスライダーが甘いところにいったりしたので、そこをもう少し詰めていきたいと思います」。実力は実証済み。自分を磨き、ブレークの日を待つ。
○北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。
(北野正樹 / Masaki Kitano)