マイナス思考で“覚醒” 育成出身→記録的連勝ストップも…東晃平「負ける怖さはない」

オリックス・東晃平【写真:北野正樹】
オリックス・東晃平【写真:北野正樹】

無傷の8連勝→7回1安打1失点で自身9連勝ならずも「負ける怖さはないんです」

 マイナスの連続からプラスを積み上げていく。オリックスの先発ローテーションを守る東晃平投手の秘密は「マイナス思考」にあった。「試合に入るまでは、マイナスのことばかり考えています。結構、マイナス思考なんです。ポジティブではありませんね」。今年4月4日の西武戦(ベルーナドーム)で1942年の藤本英雄投手(巨人)以来、82年ぶりとなるデビューから「無傷の8連勝」を飾った東は、はにかみながら打ち明けた。

 神戸弘陵から2017年育成ドラフト2位でオリックスに入団し、高卒プロ5年目の2022年に支配下選手登録を勝ち取った“苦労人”。その年に初勝利を挙げ、昨季も負けなしの6連勝と「白星街道」を突き進んできた。

 マイナス思考は1軍に昇格してからだという。「もちろん、2軍の試合も大事なので緊張はしていたのですが、登板前にご飯が喉を通らないことはありませんでした。でも、1軍では喉が通らないという感じですね」と勝負が掛かったプロの試合との違いを説明する。

 そこで編み出したのが、試合前にあえて悪い状況を予想することだった。「変に『今日はいける』と思い過ぎて、マウンドに上がってダメだった時にはショックが大きいんです。逆にそう(マイナスに)思っていて初回を抑えたら『よし行ける』という気持ちになります」。最悪の事態を想定するという準備が、冷静なマウンドさばきにつながっている。

 自身プロ8勝目の西武戦はチームが3連敗で迎えた試合。負ければ昨季1度もなかった「同一カード3連戦3連敗」を喫するところだった。「チームにとっても自分にとっても、シーズンを振り返った時、ここで勝たないと気持ち的にもしんどくなるという結構、大事な試合でした。もっと緊張するかなと思ったのですが、意外にスッと入れましたね」。これもマイナス思考を“貫いた”効果だった。

 4月12日の日本ハム戦(京セラドーム)では7回1安打1失点の好投を見せたが、初めて敗戦投手になり、9連勝は逃した。「負ける怖さはないんです。負けた後の試合では、勝ち負けより内容が大事。負け方が大事だと思います」。主戦投手としての風格も備わってきている。

◯北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。

(北野正樹 / Masaki Kitano)

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