見失った打撃フォーム…無安打記録に「何してもダメ」 元ロッテ・吉田裕太がホッとした戦力外
吉田裕太さんは2013年ドラフト2位でロッテに入団、2022年限りで引退
元ロッテ捕手の吉田裕太さんは2022年シーズンで現役を引退し、現在は自動車販売店「bond cars」の浦和店で勤務している。夢を叶えて飛び込んだプロ野球界は「凄く大変な世界でした」と振り返る。2016年には当時のシーズン無安打記録を更新するほどの不振も味わうなど、いいことばかりではなかった9年間のプロ野球生活を語った。
「テレビで見るプロ野球は華やかだし、好きな野球をやってお金をもらえるってすごく楽だなと思っていましたけど、全然そんなことはなかったですね」
2013年ドラフト2位でロッテに入団し、ルーキーイヤーから捕手としてチーム最多の50試合に出場。好スタートを切ったかのように見えた。しかし「試合に使っていただいたけれど、負ければ捕手の責任。もちろんそうだと思うんですが、その切り替えが若くてなかなかできなくて苦しかったですね」というのが現実だった。
正捕手定着の壁は高かった。求められる目先の勝利。一方で、そこに追いつけない自分……。「今、過去の自分に言ってあげられるとしたら、3年後や4年目を考えてやってもよかったんじゃないかなということですね。毎日、一喜一憂していました」という日々は、想像以上に吉田さんの心をむしばんでいった。
2016年には、開幕戦のスタメンに抜擢されて涌井秀章投手(現中日)を好リードしチームを勝利に導いた。しかし自らは3三振。そこからその年、快音が響くことはなかった。伸び続けた“不名誉”は35打席まで達し、当時の野手としてのプロ野球シーズンワースト無安打記録となった。
第2の人生は自動車営業「(野球は)やり切ったんだと思います」
「何をしてもダメ。どんどん分からなくなって、もう何をしたらいいのか。ファームに落ちて『僕、構えどうしたらいいですか』と聞いたくらい。辛かったですね」
陥ったどん底。しかし実はこの記録、すぐ翌年に同僚の岡田幸文(現楽天外野守備走塁コーチ)に抜かれることになる。「岡田さん、ありがとうって。安心しつつ、でも気持ちわかるわーって」。今では冗談を交えながら笑って振り返ることができるようになった。
晩年はベテランの域に差し掛かり、故障も増えた。ついに2022年限りで戦力外通告を受ける。「1軍の試合も呼ばれなかったですし、多少は心構えはありました。毎日痛い思いとか辛い思いが大きかったので、ちょっとホッとした部分もあったりとか」というのが本音だ。
NPB限定で現役続行を模索し練習を続けていたが声は掛からなかった。社会人からの誘いもあったが、スッパっと次の道に進むことを決めた。「ネガティブな感じで野球から離れたわけではないです。自分で(野球の道を)選ばなかったということは、やり切ったんだと思います」と清々しく語る。
千葉県出身。地元球団で扇の要として尽くした男は「全く未練はないです。今はもう、ユニホームを着たくないですもん」と爽やかに言い切る。大好きな自動車業界で、営業として研鑽を積む毎日。後悔なく進んだ第2の人生を謳歌している。
(町田利衣 / Rie Machida)