HR打って病院直行「ヒビが入っていた」 苦悶→苦悶→股間に笑顔…ブラゼルを襲った“壮絶珍事”
3球連続自打球の末、本塁打を放ったブラゼル氏
“痛すぎる”本塁打だった。西武や阪神でプレーしたクレイグ・ブラゼル氏が10年ぶりに来日し、Full-Countのインタビューに応じた。日本で放った133本塁打の中で、思い出深いのが阪神1年目の2009年に千葉マリンスタジアム(現ZOZOマリンスタジアム)で、3度の自打球の末に放った一発だった。【取材協力・一般社団法人日本プロ野球外国人OB選手会】
2009年6月14日、敵地ロッテ戦に出場したブラゼル氏は7回に小野晋吾投手と対戦。カウント1-1から、右ひざに自打球が当たり、苦悶の表情で尻もちをついた。痛みをこらえて打席に立つと、次は左ひざに自打球が当たり、地面に塞ぎこんだ。
「ほんとに痛すぎたよ……」。顔を真っ赤にしながら、それでもプレーを続けた。そして次のボールをスイングすると、今度はファウルがバウンドして股間に当たり、打席で苦笑いを浮かべるしかなかった。
「確か投手はオノだったよね。3球全部スライダーだったんだよね……ハハハ。股間に当たったあと、彼を見て『マッスグ、オネガイシマス……。マッスグ、オネガイシマス……』って言ったんだ。そしたら投げてくれたよ」
懇願が叶ったのか、ロッテバッテリーが次の球に選んだのは直球。高めを見事に右中間へ3号を運んだ。しかし打った瞬間、痛みがこらえきれず地面に倒れ込んでしまった。「もう走れなかったよ」。顔をしかめ、足を引きずりながらダイヤモンドを一周。ベンチに戻るとそのまま病院へ向かった。「アザが凄かったね。実は左ひざにはヒビが入っていたんだ」。それでも、次戦から休むことなく試合に出場。怪我を押して完走した阪神1年目だった。
当時は痛みに耐え抜いたブラゼル氏だが、引退後は3人の子どもの野球の練習に付き合いすぎて肩に2回、肘にもメスを入れているという。「家にあるバケツにはボールが200球入っていて、息子のチームの子にも投げているんだ。肩や肘の手術はもうやめたいんだよ」と止まらない笑顔。激痛の中で打った本塁打も、今ではいい思い出だ。
(上野明洸 / Akihiro Ueno)