無念の負傷離脱も“発見”した新しい胸中 宮城大弥が見つめる「相棒」の躍動

オリックス・宮城大弥【写真:小林靖】
オリックス・宮城大弥【写真:小林靖】

オリックス・宮城大弥、怪我で離脱も「言い訳はしないです」

 長く伸びた前髪をかき分けると、久しぶりに目があった。オリックス・宮城大弥投手は、明るいとは言い切れない表情でリハビリ生活を送っている。10日の楽天戦(秋田)で負傷降板。9日に神戸市内の病院を受診すると「左大胸筋の筋損傷」の診断を受けた。「悔しいです。投げていて急に……という感じだったんで。でも、言い訳はしないです」。プロ入り初の故障離脱。虚しさが胸をこみ上げる。

「最初は『何しているんだろう?』と思いました。本当は怪我をしたくなかったんですけど……。今はレベルアップするための準備期間と捉えています。無理矢理にですけど、自分をそう言い聞かせています」

 ヘッドホンで聴く音楽の歌詞が身に染みる。「前向きに……。元気をもらえますよね」。スパイクは履かず、全体練習のウォーミングアップにも入っていない。早期復帰を目指し、今は患部の状態良好に努めている。

 高卒5年目の今季、自身初の開幕投手を任されるなど6試合に登板。2勝4敗ながら防御率1.49の成績を残している。「早く戻る、というのが1番のモチベーションですね。今はしっかりと治す。それだけですね」。気迫溢れる投球が目立っていただけに、少しトーンダウンした声には寂しさが感じられた。

 今季は開幕から、ピンチの場面を封じると左拳を握りしめて大きく叫んだ。「気合が入る日が多くなったかなと思います。『勝ちたい』。それが常にあります。良い意味でも悪い意味でも、それが出ているのかなと。負けは嫌なので。勝ちたい。その気持ちが年々、高まっています」。エースに名乗りをあげる22歳。言葉の重みも増してきた。

 リハビリ生活は、大阪・舞洲の球団施設で行うため、ファームで鍛錬を積む若手選手と接する機会も多くなった。心掛けていることは「真剣な話をしないことですね(笑)。僕も若いですし、みんな年齢や経験が浅いので、そこで差は出したくないです。気軽に話せるような感じが1番良いかなと思います。10歳差あるわけではないので(笑)」。落ち着いた口調は、ベテランの風格さえある。

 話題が同学年の紅林弘太郎内野手の活躍に“逸れる”と「彼の成長……? 全くないんじゃないですかね?(笑)」と“ツンデレ”を発動。にこやかな表情で「(成長を)感じる部分もありますよ。やらなきゃいけないことはわかってきていると思う。お互いですけど、少しはレベルアップしているんじゃないかなと思います」。画面越しの“相棒”に目を細め、胸中を燃やしている。

◯真柴健(ましば・けん)1994年8月、大阪府生まれ。京都産業大学卒業後の2017年に日刊スポーツ新聞社へ入社。3年間の阪神担当を経て、2020年からオリックス担当。オリックス勝利の瞬間に「おりほーツイート」するのが、ちまたで話題に。担当3年間で最下位、リーグ優勝、悲願の日本一を見届け、新聞記者を卒業。2023年からFull-Count編集部へ。

(真柴健 / Ken Mashiba)

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