DeNAで目覚ましい“森原組”の台頭 「惜しい」3人の後輩を変えた過酷な1か月

DeNAの中川虎大、坂本裕哉、森原康平、徳山壮磨(左から)【写真:小池義弘、荒川祐史、中戸川知世】
DeNAの中川虎大、坂本裕哉、森原康平、徳山壮磨(左から)【写真:小池義弘、荒川祐史、中戸川知世】

DeNAの森原は昨オフ、坂本、徳山、中川虎と合同自主トレを行った

「超うれしいですよ。自分が抑えるよりもうれしいです」。DeNAの守護神を務める森原康平投手が目を細めるのは、1軍で奮闘する3人の“弟子”たちの存在だ。防御率0.00を継続中の坂本裕哉投手、3年目で覚醒中の徳山壮磨投手、高卒7年目の中川虎大投手。自主トレをともにした“森原組”の活躍が目覚ましい。(数字は全て5月30日現在)

 3人は高いポテンシャルを持ちながら、昨季までは殻を破れないでいた。特に坂本と徳山はドラフト2位の大卒入団。徳山は昨季までの2年間は1軍登板すらなく、坂本は制球面が課題で昨季は防御率5.76、プロ4年間でも5.66に沈んでいた。

「普通にやればというか、ちゃんとトレーニングをして考え方を整理して投げればそれなりに結果を残せるだろうなと思っていました。惜しいなと」と森原は振り返る。練習方法やオフの過ごし方などの会話を交わすうちに、1月の合同自主トレが決まった。

 シーズンを戦い抜くうえでフィジカルを重視する森原の自主トレは、過酷を極めた。1月3日から25日まで3勤1休、午前8時から午後4時までみっちり体を動かした。「比べるものではないですが、どこの自主トレにも負けないくらい追い込んだつもり」という日々は、徳山も「とにかくきつかった」と驚くほどだった。

メンタル面でも「あまりネガティブになってもいい方向にはいかない」

 また森原が3人に伝えたかったのが、メンタル面だ。「2軍から1軍に上がったとき、打たれたらまた落とされるかなとか、四球を出したらどうしようとか、マイナス方向に行きがちだったと聞いたので『そんなの出したら仕方なくね? 打たれたら仕方なくね?』と。トレーニングをして準備をして、やることをやってマウンドに上がったら、その結果を必要以上に考えるよりすぐ準備して次にいくっていうのが僕のスタイル。あまりネガティブになってもいい方向にはいかないよね、みたいな話を結構しました」。

 1軍と2軍を行ったり来たりだった坂本と中川虎、プロ入り後にイップスのどん底を経験した徳山にとって、このポジティブな考え方は大きなヒントとなった。徳山は「自分は結構考えてしまうタイプだったけれど、そういうことを聞けて前向きに考えられるようになってパフォーマンスが変わっていったので、大きかったですね」と感謝した。

 3人の成長を、森原は「感じますね。今、みんな1軍にいますから」としみじみ。「坂本も四球が少なくなって(8回2/3で2四球)手応えがあると思うんです。虎生も失点しても最少失点でとどめる、崩れないことが大事なので。徳山もずっといいのはコンディショニングがしっかりできているからだと思うんです」と後輩を思う気持ちが溢れた。

 そしてこれが、自身にとっても大きなモチベーションになっている。“日替わり守護神制”でスタートした今季だが、ここまで19試合で4ホールド12セーブ、防御率1.42の安定感でその座を自分のものにしている。「だから僕も、やらなきゃいけないじゃないですか。4人で最後まで1軍にいたいです」。2022年途中に楽天からトレード加入した32歳は、数字以上の“価値”をベイスターズにもたらしている。

○著者プロフィール
町田利衣(まちだ・りえ)
東京都生まれ。慶大を卒業後、スポーツニッポン新聞社に入社。2011年から北海道総局で日本ハムを担当。2014年から東京本社スポーツ部でヤクルト、ロッテ、DeNAなどを担当。2021年10月からFull-Count編集部に所属。

(町田利衣 / Rie Machida)

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