曽谷龍平に勇気を与えた“先輩”の言葉 「謝ればいいんだ」…ギュッと内角を突ける理由
オリックス・曽谷龍平、東晃平からの“助言”で開花
先輩の助言が、投球スタイルを変えるきっかけになった。オリックス・曽谷龍平投手は1軍デビューから8連勝の“快記録”を作った東晃平投手のアドバイスで活路を開いていた。「そういうマインドがあるのか……と、勇気が湧いてきたんです」。迷いを払拭してくれた先輩の言葉を思い出し、目を輝かせた。
金言を得たのは、4月中旬だった。今季初登板となった4月7日のロッテ戦(ZOZOマリン)。初回に援護をもらいながら、その裏に連続四球からピンチを招き同点を許し、1点リードの4回には先頭打者から3連打を浴びて逆転され、4回途中71球6安打4失点で降板した。翌日には出場選手登録を抹消され、失意の中で東に助言を求めた。
「インコースへ、どういう感じで投げているんですか」。マウンドで表情を変えることなく、内角を突く東の答えは「当ててもいいくらいのつもりで投げてるよ」というシンプルなものだった。ボールを置きにいくのではなく、自信を持って腕を振り、死球を恐れることなく投げ込めばいいという右腕の言葉。「もし当ててしまったら、ごめんなさいと謝ればいいんだ」と考えを変えることで、気持ちが軽くなったという。
再び出場選手登録されて先発した4月18日の楽天戦(楽天モバイルパーク)では、右打者の内角をストレートで突いて投球の幅を広げ、5回67球で2安打無失点。7三振を奪い、今季初勝利を挙げることができた。
「あの試合から『打てるもんなら打ってみろ』というつもりで投げています。それまではそんな度胸はなかったのですが、東さんの言葉で意識が変わりました。その投球をするためにはどうすればいいのかを、平井(正史)コーチに相談して、(4月18日の)楽天戦からはそんな気持ちでいます」
新境地に立ち、今季初勝利をマークしてから引き分けを挟んで3連勝。5月25日の西武戦(ベルーナドーム)では、先発して6回まで2失点。5-2の7回に2点を与えると1死満塁で降板。その後に中継ぎが逆転を許し2敗目を喫したが、逃げることなく向かっていく投球で試合を作った。
「まだ、何試合かを抑えただけ。信頼される投手には、まだまだです。もう練習しかありません。日々の練習の積み重ねを続けなければいけません」。春季キャンプ地・宮崎の小戸(おど)神社に奉納した絵馬に記した「信頼」を勝ち取るため、自分と向き合う。
○北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。
(北野正樹 / Masaki Kitano)