無念の指名漏れから8か月 スカウトが再び唸ったスター性…“広陵のボンズ”の現在地

決勝の先制適時打を放った大商大・真鍋慧【写真:小林靖】
決勝の先制適時打を放った大商大・真鍋慧【写真:小林靖】

初の東京ドームで値千金の決勝打…「持っているものがある」と監督

 広島・広陵高時代に通算62本塁打を放ち“広陵のボンズ”の異名を取った大商大・真鍋慧内野手(1年)が10日、東京ドームで行われた全日本大学野球選手権1回戦の中央学院大戦に「5番・指名打者」で先発出場。チームは1-0で勝ち、真鍋が初回に放った先制の右前適時打が決勝点となった。無念の指名漏れとなったドラフト会議(昨年10月26日)から8か月。190センチの長身に計り知れないポテンシャルを秘めた大器は、すでに次のステージへ向けて歩み始めている。

 初回2死一、三塁の先制機で左打席に入った真鍋は、カウント2-2から内角低めのチェンジアップを巧みに拾い右前適時打。思わず一塁ベース上で右拳を突き上げ、「先制点だったので気持ちが上がりました」と照れた。

 殊勲の先制打の背景には、冷静な読みもあった。「偵察班の方々がデータを出してくださっていて、変化球のイメージで打席に立ちました」と明かす。「自分には真っすぐが少ないだろうと思っていたら、意外に多かったです」と苦笑した通り、初球から4球目までは全て140キロ台中盤のストレートだったが、5球目に待っていた変化球をとらえたのだった。

 結局この1点を、味方の先発右腕・鈴木豪太投手(3年)が9回2安打完封で守り切った。富山陽一監督は「(真鍋は)持っているものがあるのでしょう。あの1点で勝ててよかった」と笑った。

 高校2年の春、3年の春・夏と甲子園に計3度出場しており、初めての東京ドームでのプレーにも「甲子園とは全然違う雰囲気で、同じくらいワクワクしました」と述懐しつつ、「普段とあまり変わりなく打席に立てました」と語る。自分を見失うことはなかった。

 大商大への進学早々にレギュラーの座を獲得し、関西六大学野球春季リーグでは10試合に出場し、42打数14安打でリーグ3位タイの打率.333、1本塁打、9打点。「関西六大学にもいい投手がたくさんいて、その中で自分がよくなるように、打席での立ち方やフォームを変えてきました。試行錯誤してきたからこそ、この全国大会のいい場面で打てたのかなと思います」と唇を綻ばせた。

「木製バットを持ったら体重がないと打球が飛ばない」

 昨年はプロ志望届を提出し、各球団の評価も高かったが、「4位以下の指名なら大学進学」の意向を各球団に伝えていたこともあって、ドラフト会議で名前が呼ばれることはなかった。改めて大学で実績を積んだ上で、ドラフト1位でのプロ入りを目指す。

 すでに広陵高でプレーしていた頃に比べると、ウエートトレーニングと食事で、体重が92キロから約100キロに増加。さらに「将来的にはプラス10キロは欲しい」と付け加える。「木製バットを持ったら、体重がないと打球が飛ばないので」と説明した。

「高校の時もそうでしたが、全国大会の大舞台で力を発揮できるのはさすが」とスター性に感嘆したのは、オリックスの佐野如一スカウトだった。

 翌11日には2回戦で、東京六大学を制した早大と対戦することが決まっており、真鍋は「自分たちは日本一を狙っているので、相手がどこであろうと一戦必勝の気持ちで頑張りたいです」とボルテージを上げた。大学在学中にどれほど、存在感を膨らませられるだろうか。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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