「全て一級品」侍J選出のドラ1候補をスカウト絶賛 159キロ更新できず「悔しい」
愛工大・中村優斗は侍J大学代表選考合宿で打者6人から5奪三振
侍ジャパン大学代表の選手選考合宿で、今秋ドラフト1位指名候補の最速159キロ右腕・中村優斗投手(愛工大4年)がピカイチの存在感を放った。合宿初日の22日に紅白戦(7回制)3試合が行われ、中村は変則ながら1試合目の7回表と、その裏に登板。計2イニングをパーフェクトに抑え、打者6人から5三振を奪った。
7回表には先頭打者をニゴロ、次打者を外角いっぱいの151キロ速球で見逃し三振に仕留めた後、西川史礁外野手(青学大4年)との“ドラ1候補対決”が実現。カウント1-2から外角低めスライダーで空振り三振に切って取った。
その裏も先頭打者と次打者に、いずれもフォークを振らせて連続三振を奪う。3人目の打者にはカウント1-2から、この日最速の154キロの速球。バットにかすったが、そのまま捕手のミットに収まり5つ目の三振となった。
ネット裏にはプロのスカウト陣が集結。日本ハムの山田正雄スカウト顧問は「ストレート、スライダー、フォークは大学生としては全て一級品。コントロールもいい。少し小柄(身長176センチ)だから、プロではリリーフ向きかなという印象だが、スタミナを証明すれば当然、先発の可能性もあると思います」と絶賛した。
ただ、中村自身は満足していない。「今日の目標は、まず2イニングをパーフェクトに抑えること。その次に、自己最速(愛知大学野球連盟春季リーグで計測した159キロの更新)を狙っていました。大台に乗せたかったので悔しいです」と胸の内を明かす。
3月の欧州代表戦で侍Jトップチームに抜擢…157キロを計測
4、5月の春季リーグを終えた後、トレーニングの内容を見直し、その成果に手応えを感じている。「自分としてはまだまだ、筋力が足りないと感じていますが、それでもトレーニングで着々とスピードが上がってきました。スピードだけが大事ではありませんが、1つの指標にはなると思っています」。160キロを出す準備は既にできていると言わんばかりだ。
具体的には、「ウエートトレーニングでは、重心を母指球(足親指の付け根のふくらんだ部分)と小指球(足小指の付け根のふくらんだ部分)のラインに合わせていて、投げる時にも意識しています」と説明。「これまでは“かかと重心”でしたが、重心が前にかかり、ボールに力が伝わりやすくなりました。そういうことが全部、今回のいい結果につながったと思います」とうなずく。
中村が一躍、全国的に名をとどろかせたのは今年3月。西川、金丸夢斗投手(関大)とともに大学生ながら、侍ジャパンのトップチームに抜擢され、欧州代表との第2戦(京セラドーム大阪)に2番手で登板した時だった。最速157キロで1回を3人で片付け(1奪三振)、鮮烈な印象を残した。
巨人の東海地区担当・木佐貫洋スカウトは「出力の高い投手です。彼のストレートはキレがあると言うより、力のある剛速球タイプ。リーグ戦では主に先発していますが、少ない球種で三振をバンバン奪えるので、リリーフ向きかなと思います」と見る。
「自分としては(先発とリリーフの)どちらでやりたいとかはなく、任されたポジションでベストのピッチングをしたいと思います」と中村は言う。いずれにせよ、プロのマウンドで雄姿を見せる日が待ち遠しい。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)