太田椋に才能開花の気配 紆余曲折を経て気づいた“思考”…好調理由は「気持ちの部分」

オリックス・太田椋【写真:北野正樹】
オリックス・太田椋【写真:北野正樹】

オリックス・太田椋、好調は「気持ちの部分が大きいですね」

 進化の秘密は「割り切り」と「余裕」だ。オリックスの高卒6年目、太田椋内野手が2つのキーワードで成長を続けている。「気持ちの部分が大きいですね。ある程度、結果がついてきてくれているので、そこで気持ちの余裕が出てきて『割り切る』打席を作れています」。ファンから「おりょう」「りょうくん」と呼ばれる心優しいイケメン23歳が、微笑みながら打撃好調の理由を明かした。

 太田は天理高(奈良)から2018年ドラフト1位でオリックスに入団。高校時代の通算本塁打は31本で、右方向にも長打を打てるパワーを評価されている。プロ2年目に自身初安打を本塁打で飾り、3年目の開幕戦には「2番・二塁」で先発出場したものの、ケガにも苦しみ1軍定着は果たせなかった。

 今季はオープン戦で打率.281、1本塁打とアピールに成功して、開幕1軍入りを果たした。だが、開幕から状態が上がらず、打率.162と低迷。5月5日に出場選手登録を抹消された。

 ピンチをチャンスに変えた。「1軍では1打席、1打席が勝負なので、そのチャンスを掴むためには『打たないといけない』という気持ちが強くて。そうなると自分の狙っていないボールに手を出したりしてしまっていたのですが、ファームならある程度、自分の考えていることをやれるので」。試みたのが、打席での“割り切り”だった。

 全ての打席で結果を求めず、失敗を恐れない。気持ちを切り替えると、ウエスタン・リーグ5試合で20打数9安打、打率.450。満塁本塁打も放ち5月17日に再昇格を果たすと安打を量産し、交流戦に入ってからは「3番」に抜擢された。

「まだ、優勝を諦めない」…執念の一振り

「今は正直に言って、狙ったボール以外が来た場合、仕方がないというか……。そういう打席も作れています。ファームでやっていたことを、上でも同じようにできているんです」

 すでに今季1軍での安打と打点は、58試合に出場した2022年の数字を超え、キャリアハイを更新中。2軍で打撃力強化を担当し、6月6日から配置転換で1軍に異動した高橋信二打撃コーチは「この状態を続けなければいけないんです。今までは(1軍と2軍を往復し)飛び飛びで経験しているからダメな部分がありました。好結果を出し続けることではなく(1軍で)失敗も含め、いろんな経験をし続けることが大切なんです」と、さらなる成長に期待を込める。

 交流戦開幕直後に「まだ、優勝を諦めない」という強い思いから1学年上の渡部遼人外野手、同学年の宜保翔内野手、1学年下の紅林弘太郎内野手の「仲良し4人組」で始めた1本指を立てるポーズの合言葉は「執念!」。2022年の日本シリーズで史上初の「初回初球、先頭打者本塁打」で証明済みの長打力と、積極的にバットを振る「執念」でチームを引っ張る。

○北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。

(北野正樹 / Masaki Kitano)

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