敵地やワイン名産地でも感じる大谷人気 記者がHRキャッチしたファンを取材する理由

ドジャース・大谷翔平【写真:Getty Images】
ドジャース・大谷翔平【写真:Getty Images】

ジャイアンツとの敵地最終戦「ショウヘイ・オオタニのサンフランシスコでの今季最終戦です」

 耳を疑った。6月30日(日本時間7月1日)の試合開始3時間前、ジャイアンツの本拠地オラクルパークのスタンドでは、一般客向けのスタジアムツアーが行われていた。

「今日はショウヘイ・オオタニのサンフランシスコでの今季最終戦です」

 確かにそれはそうだけど、ジャイアンツにとって宿敵のドジャース・大谷翔平を大々的に紹介するとは……。名前がアナウンスされる度の大ブーイング、ジャイアンツ投手が空振り三振を奪った時の大歓声も凄かったが、異次元のスター性を感じさせる一幕だった。

 日本ハム時代の2015年から大谷を取材させてもらっている。2021年からだろうか。大谷の本塁打をキャッチしたファンを取材するようになった。記念の一発なら分かるが、なぜ取材するか? 大谷ファンでもライバル球団のファンでも、ホームランボールをキャッチした人たちがみんな嬉しそうだからだ。

 特に印象的だったのは2021年のシーズン最終戦で46号をキャッチしたマリナーズファンの親子。マリナーズのポストシーズン進出がかかる中で、敵地を黙らせる先頭打者弾。周囲から「投げ返せ」と言われたが、この親子は決して離そうとしなかった。父のジャスティン・ナットソンさんが熱く理由を語ってくれた。

「投打でプロでいられるなんてアメージング。子どもたちに『何でもできるんだ』と示してくれている。投手だけ、野手だけに絞らなくていいと子どもの可能性を広げてくれたんだ。間違いなく家宝になる。周りは『投げ返せ』って言うんだけど『とんでもない! これはダメだ』って感じだった」

 後世にもつながる活躍ぶり。同じ日本人として取材させてもらって誇りに思う瞬間だった。そもそも「このホームランは誰が打ったの?」「オオタニって誰?」と言うファンに、まず出会ったことはない。これはこれですごいことだ。

ワインの名産地でも感じた大谷人気…愛犬・デコピンへ贈り物

 先日は休日を使ってサンフランシスコ・ベイエリア北部にあり、ワインの名産地として知られるナパバレーへ。大谷の愛犬・デコピンのアメリカ名・デコイ(Docoy)と同じ名前のワインを販売する「ダッグホーン・ヴィンヤーズ」の関係者に話を聞いた。今年4月にデコピンへデコイワインのぬいぐるみを贈っていたからだ。

 デコイワインのぬいぐるみは非売品。デコピンのために特注したものだという。そして送り主は大のアスレチックスファン。つまり大谷が昨季まで所属したエンゼルスの同地区ライバルのファンだった。

「SNSでオオタニの犬の名前を知って、うちのワインと同じだと思って。嬉しくなって作ったんです。オオタニはアメージングな選手です。投打で一流レベルの選手は、これからでてくるかわかりません。いつかデコイと一緒に来て欲しいですね」
 
 球場だけでなく、ワインの名産地でも大谷トーク――。たとえ、相手が“初めましての人”でも「オオタニ」を話題にコミュニケーションを取れる。

 10年総額7億ドル(約1130億円)の史上最高額でドジャース入りし、1年目のシーズンを折り返した。全米からとは言えなくとも、米国の野球ファンから異次元レベルに愛されることがよく伝わってくる。

○著者プロフィール
小谷真弥(こたに・まさや)1983年、大阪・大阪狭山市生まれ。埼玉・東松山市育ち。明大明治高、明大野球部を経て2006年報知新聞社に入社。地方部(富山・石川)を経て09年に運動第一部(野球部)へ異動。09年ロッテ、10、11年横浜、12年から巨人、15年から日本ハム、17年からメジャー担当。19年2月からFull-Count編集部に所属。

(小谷真弥 / Masaya Kotani)

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