中川圭太が明かす「なりたい自分」 年俸アップは「優勝の次」…復帰を目指すストイックな心
オリックス・中川圭太「お金のためにやっているわけではありません」
オリックス・中川圭太内野手は、アスリートとしての理想を追い求め続ける。「なりたい自分……? 自分のなりたい選手になりたいんです。タイトルが獲れるくらいの選手。今はそこしか考えていません」。真剣な眼差しが輝いた。
左大腿筋の筋損傷で6月13日に出場選手登録抹消となり、球団施設の大阪・舞洲で調整を続けている。胸中には、焦りはなかった。故障で戦列を離れ、1軍の勝利に貢献できないことに心を痛める毎日だが、巻き返しに臨む意気込みが言葉から溢れていた。
大阪・PL学園、東洋大を経て2018年のドラフト6位でオリックスに入団。卓越したバットコントロールで広角に打ち分け、プロ1年目から新人として初の交流戦首位打者に輝き、111試合に出場した。
プロ5年目の昨季は自己最多の135試合に出場し、2年連続して規定打席に到達。136安打、12本塁打、55打点とキャリアハイの成績を残してリーグ3連覇に貢献した。昨年12月の契約更改では3000万円アップの9000万円(金額は推定)でサインしたが、記者会見では「お金のためにやっているわけではありません」とポツリと漏らした。
「(プロ入りした)最初の頃は、やっぱり活躍していっぱいお給料をもらいたいと思っていたんです」。プロ野球選手として評価されていることがわかるのは、球団から提示される「年俸」。チームに貢献した結果を評価されるからこそ、どの選手も年俸にこだわる。中川もプロである限り、評価を追い求め続けてきた。
「優勝することが、自分の中で一番、楽しいことだとわかったんです」
気持ちが変わったのは、2022年にリーグ連覇を経験してからだという。プロ入り3年目の2021年、25年ぶりのリーグ優勝を果たしたが、左手首を手術した影響もあり、約2か月間戦列を離れて1軍定着を逃した。
2022年は110試合に出場し、打率.283。シーズン最終戦となった仙台での楽天戦に逆転勝ちし、ソフトバンクが敗れるのを待って2連覇を達成。仲間と喜びを分かち合い、初めて涙が溢れた。
「チームとして優勝することが、自分の中で一番、楽しいことだとわかったんです。活躍して数字を残せば(球団が)勝手に上げてくれるというか、自分の中で(年俸アップは)優勝の次の話なんです。自分の成績が上がれば、生活はできます。個人としてレベルアップして、優勝に貢献したいという感覚なんです」
4月中旬にも同じ箇所を痛めてしまった。再起に向け、スケジュールに沿って動く。今度こそ再発しないように慎重に――。静かに熱いハートでグラウンドに戻る。
○北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。
(北野正樹 / Masaki Kitano)