失意の中に見出した“自分” 侍の歓喜から1年半…悩んだ剛腕「やっと打者と勝負」

オリックス・宇田川優希【写真:北野正樹】
オリックス・宇田川優希【写真:北野正樹】

オリックス・宇田川優希「マウンドで弱気になる自分はもういません」

 2軍で調整中のオリックス・宇田川優希投手が“苦悩”からの脱却を図る。「自分との戦いから、やっと打者と勝負ができるようになりました。今年、ずっと自分のパフォーマンスを発揮することができなかったのですが、マウンドで弱気になる自分はもういません」。25歳右腕が、久しぶりに目を輝かせた。
 
 2023年に侍JAPANのメンバーとして第5回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で世界一を経験。初めて開幕を1軍で迎えた昨季は、コンディション不良で4月下旬から約2か月間、戦線離脱したものの46試合に登板し、リーグ3連覇に貢献した。

 今季は右肩のコンディション不良でスロー調整となり、4月21日に1軍昇格。しかし、力強いストレートと落差の鋭いフォークで打者を仕留める本来の調子には遠く、5月15日のロッテ戦(那覇)で打者3人に2四球を与えるなどの投球で出場選手登録を抹消され、2軍で調整を進めてきた。
 
 ファームでも精彩を欠く日々が続いた。6月中旬までに5試合に登板し、防御率4.00。「とにかく『抑えないといけない』とか『四球を出したらダメだ』とか、そういうことしか考えられなくて。逃げて四球を出して(ストライクを)入れに行ったのを打たれたりすることが、ずっと続いていました」と振り返る。
 
 転機となったのは7月10日のプロアマ交流戦の高知ファイティングドッグス戦(大阪シティ信金スタジアム)だった。4番手で登板し、1回を12球、2三振を奪うなど打者3人で片付けた。独立リーグの選手が相手とはいえ、思い切り腕を振って打者に向き合い、ストライクゾーンで勝負するという自ら掲げたテーマ通り、満足のいく投球内容だった。マスクを被った育成・村上喬一朗捕手も「ストレートの球威もありましたし、フォークもよかったですね。投球内容としては、最近では一番の出来だったのではないでしょうか」と、復活に太鼓判を押していた。

若手や新戦力の躍動を見て「引っ張っていかなければいけないと、本当に感じています」

 15日に行われたウエスタン・リーグのソフトバンク戦(タマスタ筑後)では3-3の9回から登板し、2死二塁から廣瀬隆太内野手に5球連続して直球で攻めてサヨナラ打を許し、救援に失敗した。

 それでも「1軍でも出場している良い打者とわかっていましたが、フォークを最後まで投げずに真っすぐで勝負しました。フォークで抑えるより、今の自分のストレートがどれだけ通用するのか、と思えたんです。そこでしっかりとゾーンで勝負することができたので、前に進んでいるという実感はあります」と振り返る。17日の阪神戦(杉本商事)では、9回から登板し被安打2、1失点でマウンドを降りたが、復活への手応えは感じ取っている様子だった。

 1軍の先発陣では宮城大弥投手が戦列に復帰し、プロ2勝目を挙げた齋藤響介投手や育成登録から支配下選手登録をつかみ、プロ初先発で初勝利をマークした佐藤一磨投手ら若手が台頭。ブルペン陣でも、井口和朋投手や鈴木博志投手、吉田輝星投手ら実績のある移籍組のほか、アンドレス・マチャド投手やルイス・ペルドモ投手、古田島成龍投手、才木海翔投手ら新戦力がチームを支える。

「今、若手や去年までいなかったメンバーがブルペンで頑張ってくれています。早くその中に入って、引っ張っていかなければいけないと、本当に感じています」

 まだ、シーズン半ば。剛腕復活が4連覇の鍵を握る。

(北野正樹 / Masaki Kitano)

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