近本光司の心配な「90→69」 故障者続出の阪神…2年連続日本一へ必要な“改善点”
阪神の前半戦をデータで検証する
阪神は、昨年の原動力となった投手力は今年も変わらずの実力を発揮しながら、打撃陣は昨年ほぼ固定だったレギュラーメンバーに異変が起き、思うように貯金を作れずじまいで前半戦を終えた。得点と失点の「移動平均」から、チームがどの時期にどのような波だったかを検証する。(数字、成績は7月21日現在)
「移動平均」とは、大きく変動する時系列データの大まかな傾向を読み取るための統計指標。9試合ごとの得点と失点の移動平均の推移を示す。開幕当初の2週間は8試合でQSを達成するも、投打の噛み合わせが悪く5勝8敗とスタートダッシュに失敗。しかし、4月後半のタイガースは快進撃に転じ、7連勝を含む10勝1敗2分と一気に首位に躍り出る。昨年に引き続き先発投手、救援投手ともに安定。特に4月の救援投手の防御率は1.13と無双状態だった。
ただ5月以降、レギュラークラスの野手に異変が生じる。4月まで打率が2割を超えず守備でも精彩を欠いていた佐藤輝明内野手が5月15日に登録抹消、6月5日には昨年不動の4番だった大山悠輔内野手も登録抹消と主砲2人が離脱。さらには木浪聖也内野手も怪我により6月16日に登録抹消。6月は打率.214、OPS.566、5本塁打と得点力不足に悩むことになる。ただ7月に入ると前川右京外野手、野口恭佑外野手といった新戦力を含めバージョンアップした打線となり徐々に得点力を回復しようとしている。
投手陣は先発投手、救援投手ともにリーグ平均を大きく凌駕する力が備わっている。防御率は先発、救援ともにリーグ2位。QS率もリーグ2位だが、HQS率40%はリーグ1位。1四球に対する奪三振の比を表すK/BBもリーグ1位の安定ぶりだ。
打線では1番・中堅の近本光司外野手が打線の核となっており、打率、OPSともにチームトップである。ただ出塁率が昨年の.379から.330と物足りない状況。さらに気になるのが、盗塁成功率が昨年90%だったのが69%に減少していること。チーム全体でも51.9%となっているのだが、成功率の損益分岐点が72%なので、ここは早急に改善が必要である。
鳥越規央 プロフィール
統計学者/江戸川大学客員教授
「セイバーメトリクス」(※野球等において、選手データを統計学的見地から客観的に分析し、評価や戦略を立てる際に活用する分析方法)の日本での第一人者。野球の他にも、サッカー、ゴルフなどスポーツ統計学全般の研究を行なっている。また、テレビ番組の監修などエンターテインメント業界でも活躍。JAPAN MENSAの会員。近著に『統計学が見つけた野球の真理』(講談社ブルーバックス)『世の中は奇跡であふれている』(WAVE出版)がある。